20日朝刊3面【総合2】
訪日外国人旅行者が過去最速のペースで1千万人を突破したが、地域別に見ると濃淡が生じている。観光庁の調査で延べ宿泊者数をみると「ゴールデンルート」と呼ばれる東京や大阪、京都のほか、北海道や沖縄といった人気の観光地の多さが目立つ。同庁は「知名度の高い観光地や、空港などが立地する交通の便のよい都市部が目立つ傾向は変わらない」(観光戦略課)としている。
サッポロドラッグストアーは6月、札幌市中心部の狸小路商店街に2店舗をオープンした。その一つ、訪日客対応の旗艦店と位置付けた「狸小路5丁目店」は、中国人に人気の馬油商品コーナーを設けたことなどが好評で開業早々、全社で売上高トップの店となった。まだ出店余地があるとみて同社は9月、同じ5丁目に売り場面積を4割広げた大型店を開く。
2014年の外国人の延べ宿泊者数で、北海道は東京都、大阪府に次いで3位となっている。
出発前にネットで調べた料理の画像をスマートフォン(スマホ)で示して注文する――。那覇市内では庶民的な食堂にも訪日客の姿が目立つ。スマホを使って店員とやりとりする光景は珍しくなくなった。沖縄県によると、同県を訪れる外国人観光客は、14年度に過去最高の約98万人となった。勢いは衰えず6月まで3カ月連続で単月の過去最高を更新している。
出遅れているのが東北だ。主に観光目的で14年に東北6県に宿泊した外国人観光客は約20万人。この年の訪日客全体の2%に満たない。原発事故の影響を懸念して旅行を控えており、この傾向はなお続いている。東北観光推進機構(仙台市)の佐藤一彦副本部長は「温泉などの情報をうまく発信できていないのも原因だ」と話す。
機構は16年度までに東北の宿泊施設を利用する訪日客を、東日本大震災前と同じ水準の50万5千人に増やす目標を掲げている。1〜7月の訪日客数は、前年同期比47%増の1105万人と1000万人の大台到達は昨年より3カ月早く、過去最速であり、観光庁は「特段の外的要因がない限り、通年で1800万人を超える見込み」と分析していると上段の記事にあります。
特に、7月は前年同月比51%増の191万人と、単月としてこれまでで最も多かったそうで、要因として「円安で日本での滞在や買い物が割安になっている」、「政府による査証の発給要件緩和」、「消費税の免税制度拡充」などが挙げられています。
また国・地域別では、中国が前年同期に比べ2倍強の275万人で首位、2位は韓国の216万人(42%増)、3位は台湾の215万人(29%増)で、香港、米国が続いたとあります。
政治的な状況とは、180度異なっていることがポイントです。
「2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2,000万人を目指す」というのが、いわゆる「アベノミクス」における成長戦略ですが、東京オリンピックを待たずとも達成できるのではないでしょうか。
とにかく、街を歩いていても外国人が多い、電車の一車両でも自分以外は周囲は全部外国人だったなんてこともあります。
かつては、東京に居る外国人は外資系ビジネスマンが主であり、従って家族で転勤してきたものです。
外国人向けの家具付き賃貸高級マンションなんかが、千代田区はじめ世田谷まで展開しており、専任の仲介業者などもありました。
ところが世界的に景気が悪くなると出張扱いとなり、東日本大震災後はそれが顕著です。
現在のように、利便性の良い立地を活かした長期出張者用の家具付き高級ホテルが主流となったのは、こうした事情があったからです。
当時と一変したのは、バックパッカーだけでなく観光バスで乗り込む観光客の姿が、日本のあちこちで見かけられるようになったことです。
これは、明らかにかつての状況とは違う、それが数字となって表れているのですね。
「地方創生」と言うと、「また、いつもの『地方を元気に』とか『地方のことは地方に任せろ』とかと同じ、スローガンだけの事だろ」や、「どうせ補助金バラ撒いて終わりだろ」みたいにメディアは高を括っているのか、あまり注目していません。
だから、静かな環境で進めることができているのでしょうが、「アベノミクス」の根幹を成すこの政策は「地方行政のマネージメント化」という実は恐ろしい代物なんですね。
創生で思い出すのは、竹下内閣での「ふるさと創生」事業。
この時、3,000あった地方自治体に1億円づつ配り、何でも使っていいよというバブル時代そのものの事業でしたが、使途を定めない掴み金を渡して、地方がこれをどうするのかというマネージメントの試金石だったのですね。
当然、泡のように一瞬で消えてしまったものもあれば、今もちゃんと活性化のために役割を果たしている事業もある、一口に「地方行政」と言っても同じものは一つもなく、千差万別なのがよく分かります。
何でこうなったのか、それがマネージメントなんです。
「地方創生」とは、国庫に掴み金はもうないので、あとは自分たちで生き残りのマネージメントをやって下さいね、という国が中央集権を手放した瞬間だと言えます。
危機感ある自治体は、人口をどうやったら増やせるのか、独自の産業を育成することはできないか、ウチの産品をブランド化して輸出できないか、すでに必死の取り組みをはじめてます。
これからは、市民が首長さんたちに求めるのは、政治力でなくマネージメント力であり、自治体の一つ一つが国営企業から私企業になったのだと思えば、高齢者・人口減社会と呼ばれ衰退していく市町村をどうやって生き残り、発展させるかが首長さんたちの仕事ということになります。
企業ならば、自分たちで稼がねばなりません。
国内需要が減るとすれば、海外からの消費や投資を呼びこむ、それには魅力的で競争力のある商品やサービスを提供する、いわゆる「稼ぐ力」をつけることです。
なぜ、成長戦略に訪日外国人旅行者数がターゲットになってるかと言えば、外人観光客が地方を訪れ、観光産業が自治体にとって主たる収入になっていくだけの「稼ぐ力」をつけてもらいたいからです。
それには、多くの市町村との競争を勝たねばなりませんが、この市場は決してゼロサムでなく、競争によって市場が拡大していくという自由資本主義の世界です。
今までのように国に陳情や苦情を言って、交付金やら補助金をタンマリ貰ってくるのが良い首長さん、という時代は終わりました。