安倍晋三首相はインドでモディ首相と会談し、両国政府が原子力協定を結ぶことで大筋合意した。インドは原子力発電所を大幅に増やす計画で、日本がもつ原発技術に強い期待を寄せている。政府間で協定ができれば日本の原発メーカーによる輸出に道筋がつく。
だが協定締結にあたっては、インドが核拡散防止条約(NPT)に入らず核実験を重ね、核兵器を保有していることを忘れてはならない。日本が提供する技術や機材、情報が核兵器の研究・製造に転用されないよう、厳しい歯止めをかけることが欠かせない。
安倍首相は「協力を平和目的に限定する内容を確保した」と述べたが、中身は明らかにしなかった。軍事転用を防ぎ、民生利用に限定する仕組みをどのように設けたのか。日本政府は国民や国際社会に丁寧に説明する義務がある。
今後の交渉ではルールをさらに詰め、協力の範囲や対象をはっきりさせなければならない。
インドは経済成長に伴い電力が不足し、温暖化対策でも原発を切り札と位置づけている。米国やフランスなどと原子力協定を結び、原発の輸入に動き出している。
欧米メーカーが原発を輸出する場合でも、原子炉容器などで高い技術をもつ日本メーカー抜きには成り立たなくなっている。インドが民生分野で原発の利用拡大をめざすのであれば、日本だけが背を向けているわけにはいくまい。
一方で、日本は唯一の被爆国として核兵器を持たず、他国の核武装にも協力しないことを原則としてきた。インドとの原子力協力でもこれを貫き、核実験を再開しないよう求め、NPT加盟や核軍縮を粘り強く働きかけるべきだ。
首脳会談では、インドが商都ムンバイと北西部の工業都市アーメダバードの間に計画する高速鉄道に、日本の新幹線技術を採用することも決まった。建設費用の一部を円借款で支援する。
高速鉄道は各国で計画が相次ぎ、受注競争が激しさを増している。今回の決定を日本が世界市場で競うための足がかりとしたい。
鉄道車両の輸出や線路の建設で終わらせず、運行や保守にも関与していくことが大事だ。事故や故障を減らし安全性の高さを示すことが、長い目でみてコストを下げ、日本のインフラ技術の評価を高めることにつながる。インドの国情に合わせて支援内容を柔軟に修正することも欠かせない。
日印の歴史にとって、新たなページを開きましたね。
もともと、インドとの関係強化は対中国包囲網の要であり、これが大変よく効いています。
原子力協定については、日本が長年締結を希望していましたが、事実上の核保有国でありながらNPTや包括的核実験禁止条約(CTBT)に参加してないことを理由に、アメリカが強固に反対していたのです。
しかし、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に、米が方針を転換し、2007年に米印原子力協定を締結。
IAEAの査察など、軍事転用禁止の担保措置を講じたわけで、おそらく日本もこれに倣った協定内容だと思います。
米印原子力協定も対中包囲網の一環だったので、中国は反対措置としてインドと対立しているパキスタンに原発を供与していきますが、インドとパキスタンの経済成長の差からして、この供与は最初からビジネスベースではない、政治色が強いものだったと言えましょう。
日本においても、被爆国だからという理由で日印間の原子力交渉に反対する人たちがいますが、知ってか知らずか中国に荷担していることになっています。
二酸化炭素排出による地球温暖化説には与しませんが、いずれにせよ環境的に化石燃料使用の低減は目指す必要があり、現在の技術においてベースロード電源として原発に代わるものがない以上、日印の協定は国際的にも評価されるものです。
また、高速鉄道計画において、日本の新幹線技術が中国との競争に打ち勝ったのも大きなポイントです。
インドネシアでは、先方の言い分を全部丸呑みしてまで受注を獲得した中国でしたが、そんな無茶な条件を呑めば、あとで大変なトラブルになるのは目に見えています。
これも、前述のパキスタンへの原発供与と同じ話で、商売度外視のスタンスはどうなのかと思います。
ご案内のとおり、英領だった時代の遺産でインドは鉄道大国です。
総延長は62,000キロもあり、日本の27,000キロと較べても倍以上です。
しかし、技術も設備も旧式のため、混雑や事故、輸送量や運行の乱れが大きな問題となってます。
最新の鉄道技術の潜在需要がどれだけあるのか、よくわかると思いますが、日本と同じく経済成長に従って鉄道の高速化と安全性の向上はインド経済にとっても必須です。
当然、この先も中国との競争になりますが、日本は実績を重ねることによって信頼を勝ち得ていくのが最もよいのだと思いますね。