米連邦準備理事会(FRB)が16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で9年半ぶりの利上げを決めた。政策金利の誘導目標を「ゼロ」とする危機対応型の政策から脱却する。主要国の株式相場はほぼ全面高となったが、今後も続く米利上げは減速する世界経済には重荷だ。軟着陸するかが焦点になる。
米利上げを受けた世界の金融・資本市場は、株式や新興国通貨などリスク資産を買う動きが活発になった。
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が利上げに踏み切る一方、引き締めを緩やかに進めると強調し、米景気回復と緩和的な環境の継続を期待する市場関係者を安心させたからだ。米経済の成長鈍化、新興国からのマネー流出など利上げの副作用が懸念されてきたが、「金融政策を巡る霧が晴れ、リスクを取る動きが出てきた」(野村証券の明渡則和執行役員)。
17日の東京市場では円安・株高が進んだ。日経平均株価は前日比303円(1.6%)高と続伸し、終値は1万9353円と8日以来の高値水準になった。円相場は1ドル=122円台後半と1週間ぶりの安値を付けた。
海外市場でも、リスク資産にマネーが再流入した。前日の米ダウ工業株30種平均は1%高と3日続伸し、17日のアジア市場でもインドネシア株や台湾株が2%弱の上昇となるなど全面高となった。17日の欧州市場はドイツ株、フランス株が約3%高く始まった。
外国為替市場では新興国通貨が軒並み強含んだ。ブラジルのレアルは年初から対ドルで3割下落し、16日も国債の格下げで弱含んでいたが、米利上げが決まると格下げ前の水準に上昇した。17日にかけてインドのルピーやトルコのリラも買われた。
世界の市場が落ち着いた反応だったのは、2013年5月にFRBのバーナンキ前議長が量的金融緩和の縮小を示唆してから2年半が経過し、市場が利上げへの備えを進めていたことも大きい。
「出口戦略」と呼ばれる、ゼロ金利政策緩和が非常に難しいことを物語っています。
結局、バーナンキ氏がFRBとしてコミットしていた物価目標値も未達ですし、GDPも2%という低成長のままです。
「米経済は十分強い。利上げの条件は整った」、というイエレン議長の発言は、額面どおりに受け取れません。
しかし、オオカミ少年じゃありませんが「上げるぞ」「上げるぞ」と利上げの示唆を続けてきたのに、そのたびに景気の腰が折れ、先送りにしてきたFRBを市場がそろそろ信用しなくなってきたという焦りがあったのだと思います。
かつて、「市場との対話」で名を馳せたグリーンスパン氏が議長時代は、実際の政策より彼の発言ひとつで市場が動いていたもので、FRBの権威というのがどれだけ高かったのかということです。
もちろん、バーナンキ氏やイエレン氏が学者出身なのに対し、グリーンスパン氏はビジネス界出身という違いもあるのでしょう、しかし金融当局が単なる金利操作機関だけでなく、コミュニケーションによって政策を浸透させ、経済をコントロールしていく極めて政治的な役割を果しているのです。
従って今回の利上げも、実際の金利そのものよりメッセージ性の方が強く、そろりそろりだが「脱・危機」に向けて動き始めましたよというコミュニケーションの一つなんだと考えます。
ですから、年4回のFOMCで機械的、段階的に利上げしていくのでなく、様子をみながらの操作となるのでしょう。
こうしたアメリカの動きに、日本のメディアや政治が反応するのが心配ですね。
「いつまで異次元緩和を続けるのか」から始まり、「財政ファイナンスじゃないか」やら「このままだとハイパーインフレになる」やらのトンチンカンな批判がまた出てきそうです。
日本はリーマン・ショック対策として、麻生内閣で大きな経済財政政策を打ち、それが奏功する頃に政権交代となりました。
ところが、極端な円高・デフレ進行を止めず放置した民主党政権と白川日銀総裁によって、3年以上も空白の期間をつくってしまったのです。
ようやく、自民党が政権を奪還しアベノミクスで失地回復を試みていますが、米欧の危機対応に較べて3年は遅れてしまっていると言っていいでしょう。
アメリカですら、低空飛行からヨロヨロと上昇しようかという有様ですから、日本の「脱・危機」は早くてもあと3年後、消費税増税の影響やオリンピック景気の具合も勘案しながらの判断です。
政府と日銀は「時期尚早」として、批判を撥ね付ける必要があります。
