2015年12月11日

税制大綱 自民、正式決定遅らす 軽減税率、官邸主導に不満 首相周辺「覆らず」

11日朝刊2面【総合1】
 2016年度税制改正大綱の正式決定が11日以降にずれ込んだ。17年4月の消費増税時に導入する軽減税率で、首相官邸の主導で公明党に大幅に譲歩しなければならなくなったことへの自民党幹部らの不満が、手続きを滞らせた。ただ、党税制調査会の影響力低下は著しく、税制改正の中身を差し替えるほどの勢いはない。
 「今日をタイムリミットとしてやってきた。一両日中にまとめたい」。10日午前、自民党臨時総務会。谷垣禎一幹事長は軽減税率を巡る公明党との協議終結が近づいていると報告した。
 谷垣氏の表情には複雑な思いがにじんだ。財源4000億円を上限とみて増税時の対象品目を生鮮食品に絞る方針を大きく転換したからだ。当初から加工食品を含めることにし、規模は約1兆円に膨らむ。16年夏の参院選をにらみ、公明党との連立を重視する安倍晋三首相や菅義偉官房長官らに促された結果だった。
 総務会メンバーの評価は割れた。山本一太元沖縄担当相は「選挙に負けたら元も子もない」と理解を示す一方、村上誠一郎元行政改革相は「『首相官邸の印籠が見えないのか』と押し切ることが本当に党内民主主義なのか」と批判。税調前会長で最高顧問の野田毅氏は「大変な混乱が起きる」と警告した。
 10日午後、谷垣氏は都内のホテルで公明党の井上義久幹事長と合意文書をめぐる調整をしたが、わずか20分で終わった。党側の思いをくめば、すんなり合意するわけにもいかない。官邸と党の板挟み状態にある谷垣氏は党本部に戻ると、幹部らとも調整を続けた。
 「幹事長同士の協議を注視したい」。10日午前、自民党税調の幹部会議。宮沢洋一会長が軽減税率を巡る与党協議の状況に触れると、出席者から「当事者意識がなさすぎる」との声が上がった。
 宮沢氏ら税調幹部は公明党との協議をまとめられず、軽減税率問題を幹事長に委ねた。税の専門知識に通じ、難しい調整をまとめ上げることで一目置かれてきたのがこれまでの自民党税調だ。それを放棄すれば求心力は著しく低下する。
 16年度税制改正では法人実効税率引き下げも官邸と経団連が主導して決着した。大綱を了承した10日の税調総会の出席者は例年より少数で、税調幹部の一人は「こんなに影響力がなくなってしまったのか」と嘆いた。
 官邸や公明党は動じていない。首相周辺は「官邸の指示は簡単には覆らない。流れは変わらない」と明言した。公明党の山口那津男代表は10日午前の記者会見で「かなり協議が詰まっている。進展に期待したい」と余裕の表情をみせた。大綱決定の足踏みは、一部の自民党幹部のガス抜きのため、と公明党側はみる。


かつて、自民党税制調査会(税調)と言えば、総理総裁ですらアンタッチャブルな存在でした。
税のプロである自民党ベテラン議員をインナーと呼び、旧大蔵省主税局と二人三脚で日本の税制を決めていく、そこには党幹部どころか内閣すらも議論に入れませんでした。
小泉内閣の時でしたか、形骸化していた政府税調をテコ入れし、党税調に対抗させようとする試みもありましたが、その後、政府税調の動きは再び低調となります。
しかし、党税調は何も悪いことばかりでなく、独自の調査によって広く普く税の問題について国民からの声を聞き取り、それを総合的に判断して税制に反映させていこうという仕組みが働いていました。
従って、党内組織であるにも関わらず、内閣や党からの政治的要求を「素人の戯れ言」として撥ね付けることが多々あり、まさに超然勢力たる存在です。
税制を主導する主税局にとっては、税調という無敵の盾があるのですから、最強の布陣だったと言えます。
その税調会長の首を安倍首相は野田毅氏から宮沢洋一氏すげ替えた、これですら自民党開闢以来の大ニュースなのに、その税調の反対を押し切ってまで公明党が主張する軽減税率を導入しようとしている、おそらくシャウプ勧告以降では、日本の税制決定プロセスにとって驚天動地な出来事だと思います。

「公平・中立・簡素」、税の三原則と呼ばれていますが、そう簡単なお話ではありません。
そもそも、消費税のような間接税は、誰もがする「消費行為」に対して一定の税率が掛けられるのですから、最も公平であり、中立であり、簡素であります。
だが、消費税特有の所謂「逆進性の緩和」とか「痛税感の緩和」というのに対策を施そうとすると、どうやっても三原則を崩すことになります。
だったら、今の税率のままでいいだろうと言う議論もありますが、現行の税制にしても「益税」など公平性に欠けている点は否めません。
つまり、何をやっても誰もが納得するパーフェクトの制度にならないわけで、何か対策すれば何か瑕疵が出るという具合にトレード・オフの関係だと思うのです。
ですから、緻密な税理論で構築してきたのと違い、消費税は極めて「政治的な税」だと言っていいでしょう。
しかも、先進国の税収入にとって間接税が大きな割合を占めるに至り、すでに「税のプロ」ではなく「政治のプロ」の出番が今は求められているのです。

今回の消費税を巡る一連の議論で大変興味深いのは、当初、税収の目減りが少なく「逆進性の緩和」という低所得者対策となる税額控除を自民党税調が言い、増税によって再びリセッションに入ることを懸念し、軽減税率による「痛税感の緩和」というマクロ経済対策を公明党が言っている所です。
更に、自公が軽減税率で方向性を一本化した後も、対象品目について自民党は財政規律を盾に、公明党は軽減効果を盾に議論が続きます。
公明党の言う対象品目の拡大とは、実質的に毎年の減税、あるいは財政出動するのと同じことであり、それが4000億円では効果が足りず1兆円だという主張なのです。
1兆円の減税と考えれば、凄いことを言ってるわけです。
本来なら、自民がマクロ経済による拡大路線、公明は財政負担の少ない低所得者対策でしたが、これでは立場と主張が全く逆でしょう。
巷間、安倍首相が公明案を強力に後押ししているのは、公明党からの選挙協力欲しさだからだとされてますが、それは所与のこととしても、やはり首相も増税時の再リセッションを懸念しているからだと思います。
「アベノミクス」が安倍政権の原動力である以上、次の増税では前回の轍を踏まないという公明党の主張には説得力があります。
posted by 泥酔論説委員 at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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