2015年11月24日

テロと憎悪の連鎖を断ち切るには

24日朝刊2面【総合・政治】社説
 パリ同時テロから10日あまりが過ぎた。卑劣なテロへの怒りは犠牲者への追悼とフランスへの連帯の輪となり世界に広がっている。
 近代共和制は18世紀のフランス革命で幕を開けた。多くの血を流してつかみ取った自由や平等の価値観は現代社会の土台である。これを踏みにじる理不尽な暴力を許すわけにはいかない。
 イスラム過激派に国際社会は結束して立ち向かわねばならない。同時に忘れてならないのは、なぜイスラム教の過激思想が生まれ、勢力を広げるのか。根っこにさかのぼって対処することだ。
(中略)
 第1は目先の脅威であるISの封じ込めであることは言うまでもない。ISの掃討作戦で米国を中心とする有志国連合とロシアに歩み寄りの機運が生まれている。シリア内戦の外交解決に向けた協議も動き出した。これらを成果につなげたい。情報交換や資金源を断つ連携を深めることも必要だ。
 第2は中東に暮らす人々の生活水準を底上げし、社会環境を改善する息の長い支援だ。若者の過激思想への傾斜を食い止めるには増大する人口を吸収する雇用の創出や産業の育成が必要だ。中東に原油輸入を依存する日本はこの分野で積極的に役割を果たすべきだ。
 シリアのほかにも、リビアやイエメンでも内戦や混乱が長期化し事実上の無政府状態が続く。国際社会が和平の実現を後押しし、国を逃れた人々が母国に帰還できる環境を整えることが大切だ。
 第3は共存への理解だ。欧州は積み上げてきたイスラム社会との融和の努力を止めてはならない。難民に門戸を閉ざすことだけがテロへの処方箋ではないはずだ。市民どうしやイスラム教とキリスト教の宗教指導者など、あらゆる階層での対話を強化すべきだ。
 日本で暮らすイスラム教徒も増えている。異なる宗教への理解と寛容を身につけることの大切さは欧州だけの問題ではない。


「ISの問題を考える時、2011年に中東で始まった民主化要求運動『アラブの春』の失敗を見落とせない。長期独裁政権が相次いで倒れたが、人々が思い描いた安定は訪れなかった」、と社説子も欧米が進めた中東アフリカ政策の失敗を認めています。
イスラムにはイスラムの政治体制があり、欧米の言う自由民主主義が彼らに適していなかったということです。
欧米流の自由で民主主義でなければ、それは後進国だという「正義」が罷り通っていたわけで、それが間違いであったことは誰の目にも明らかだと思います。
同じ自由民主主義であっても、その国、その民族でローカライズされて適合していくものであり、欧米から見ればそれが「長期独裁政権」だと非難しようが、外から押し付けたものでは上手くいかないのです。

社説子は、テロと憎悪の連鎖を断ち切るにはと題し、まずISの撃滅、次に中東の安定化、そしてイスラム教徒とキリスト教徒の対話と共存という3点を提案しています。
いかにも社説らしい、誰からも文句は言わせないぞ的な感じですけど、1番目はもう当たり前で、まずは目の前の火を消してからねというお話で、3番目は単なる建前論に過ぎません。
重要なのは、2番目にある内政の安定化じゃないですかね。
「戦争というものは、ほとんどがどこかの国内の政治的事件を契機として始まっています」(岡崎久彦著『戦略的思考とは何か』)とされるように、ISもイラクとシリアの両国内の混乱から派生したものであり、まずはこの安定がなければ「テロと憎悪の連鎖」は断ち切れないと思うのです。
そして安定のためには、強い中央政府が必要であり、それが欧米のスタンダードからすれば「独裁政権」であろうとも戦争には代えがたいということです。
アメリカにしても、お膝元の中南米政策では「独裁政権」を黙認していますし、それが地域の安定にとって必要悪だからという割り切り方をしています
大国というのは、こうしたダブルスタンダードでなければ、グローバルに政治を展開できないわけで、その点でオバマ大統領はナイーブ過ぎたのです。

先日も書いたように、オランド仏大統領が対IS作戦で行脚を始め、まずイギリスのキャメロン首相と会談し、早速軍事的協力を取り付けました。
26日はワシントンでオバマ大統領、その後、ベルリンでメルケル首相と会ってから、モスクワに飛んでプーチン大統領というスケジュールだそうで、さながらフランスが連合軍総司令官のような姿になっています。
フランス国内的には、テロ情報を全く掴んでなかった治安・情報当局に重大なミスがあったのですから、責任論が発火する前に「剛腕大統領」のイメージを作っておこうということなのでしょう、これはこれで大いに結構なことです。
問題は、シリア内政にどこまで連合軍がコミットしていくのか、もっと言えば、アサド政権をオバマ氏が認めるのかどうかに懸かっています。
オバマ氏にプラグマティズムを説けるかどうか、それがオランド氏の手腕だと思います。
posted by 泥酔論説委員 at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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