2015年11月22日

ロシアは対テロ国際協調を

22日朝刊2面【総合・政治】社説2
 エジプトのシナイ半島で先月末起きたロシア旅客機の墜落について、ロシアのプーチン政権が「爆弾によるテロ」と断定した。
 搭乗していたのはほとんどがロシアの観光客で、乗客・乗員224人が犠牲になった。プーチン大統領は「地球のどこにいようが犯人を見つけ出して処罰する」という。ロシアが国際社会の足並みを乱さず、関係国と連携してテロとの戦いを進めるよう求めたい。
 墜落原因を調査した連邦保安庁(FSB)は機体の破片などから外国製爆発物の痕跡が見つかったとし、機内に仕掛けられた手製爆弾が上空で爆発したと断じた。
 ロシア機墜落に対しては、過激派組織「イスラム国」(IS)傘下の組織が犯行声明を出しているが、ロシアはこれまでテロの可能性に慎重な見方を示してきた。
 プーチン政権はIS掃討と称して、9月末からシリア領内で空爆を開始したばかりだ。その報復テロだったと早々に認めれば、政権への不信が国内で広がりかねないと危惧したとみられる。
 ここにきてテロと断定したのはやはり、パリ同時テロの影響だろう。ISによる残忍なテロの被害国としてフランスと共闘すれば、国際社会の同情も集めやすい。ロシアが唱えてきたIS掃討の国際連携と、政権派と反体制派の協議を通じてシリアの内戦終結をめざす構想も関係国の理解を得やすくなると踏んだようだ。
 現にオランド仏大統領は近く米国とロシアを歴訪し、対テロ連携に向けた米ロの仲介役を担う意向だ。ISを封じ込めるには、テロとの戦いで国際社会が結束するとともに、シリアの内戦を一刻も早く終わらせる必要がある。
 ロシアがシリアに介入する思惑をめぐっては、ウクライナ危機による国際的な孤立脱却に加え、アサド政権の延命やシリアでの軍事的な利権保持を狙っているとの疑心が拭えない。ロシアが真に国際連携を望むなら、米欧や中東諸国の主張に真摯に耳を傾け、協調した行動をとることが肝要だ。


「社説」というのは、一応は新聞社を代表する意見だということになってますので、どうしても建前だけになりがちです。
「ロシアが真に国際連携を望むなら、米欧や中東諸国の主張に真摯に耳を傾け、協調した行動をとることが肝要だ」、なんて結語はまさに建前論そのものであり、それまでの状況分析を全部台無しにしてるのですから、むしろ書かなかった方がまだマシでしょう。
重要なのは、「ISを封じ込めるには、テロとの戦いで国際社会が結束するとともに、シリアの内戦を一刻も早く終わらせる必要がある」という所であり、ここで終わっていれば意味ある社説だったと思いますね。
先日も書いたように、「G20でもオバマ、プーチン両大統領がこの問題について、ロビーのソファーでしか話ができてない、そこに同席したのがロシア側通訳とライス安全保障担当補佐官の4人だけという有り様で、米ロがこれではISに対抗なんてできません」、と米露の対立こそがシリア問題であり、逆に言えばオバマ大統領とプーチン大統領ともに受け容れられるプランが問題の解決策だということになります。
社説のとおり、オランド大統領は24日にワシントン、そして26日にモスクワで米露大統領と会うことになっていますが、これはフランスがアメリカとロシアのブリッジになって、シリア問題で妥協策を提示するのだと考えます。
おそらく、主としてアメリカ側にアサド政権の当面維持という妥協を呑んでもらうことになるのでしょう、オランド氏とオバマ氏とで着地できれば、それをプーチン氏に報告するということなので、米露という会談順になっているわけです。
従って、シリア問題が大きく動くとすれば、このブリッジ会談にあると言っていいのです。

もし、オバマ大統領の顔を立てるとすれば、アメリカはイラクのIS攻撃に専念し、ロシアはシリアに専念しましょうという地域分担の案だと思います。
すでに、米特殊部隊など「軍事顧問団」という形でイラクに地上部隊を派遣し、イラク軍やクルド民兵を支援しているアメリカとすれば、割りと飲みやすい話です。
ISの本拠地となっているモスル奪還が、対IS作戦にとって最大のクライマックスでしょうし、シリアではラッカ奪還がそれに当たります。
アメリカはモスル、ロシアはラッカという目標が共有できれば、あとは其々の作戦に拠るところです。
これでオバマ氏が一番嫌がるのは、第二次大戦後の東西分裂ようにシリアがロシアの支配下に入ってしまうことでしょう。
そうは言っても、イラクだってアメリカの支配下なんですから、ISに支配されるよりマシだと考えるべきです。
オランド氏にはウクライナ停戦合意を実現させた自信があり、今回も米露を当事者として説得することができると踏んでいますが、果たしてどうなるのかが注目点です。


posted by 泥酔論説委員 at 12:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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