2015年11月18日

辺野古、異例の訴訟合戦 官房長官「工事進める」/沖縄知事「容認できぬ」

18日朝刊3面【総合2】
 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題は、政府と沖縄県双方が司法に訴える異例の訴訟合戦となる。政府は裁判結果に自信を持っており、移設工事は中断せず2020年の完工をめざすとしている。翁長雄志知事は「基地建設は容認できない」と提訴で対抗。民意も鍵を握るとみて辞任して臨む出直し選や県民投票の検討に乗り出した。
 「知事から解決策を聞いたことがない」。17日午後の記者会見。菅義偉官房長官はいつになく厳しい口調で翁長氏を批判し、提訴を「やむをえない措置」と主張した。
 1995年以来、20年ぶりとなる政府と沖縄県の法廷闘争。今回も先に訴えたのは政府だ。翁長氏による埋め立て承認の取り消し処分を撤回する「代執行」に向け、裁判を起こした。
 政府側は高裁判決は来年2〜3月、県が上告しても最高裁判決が出るまで1年程度と見込む。その間も移設作業を続け、年内には辺野古の護岸に埋め立て作業の足場をつくる工事に入る方針だ。
 代執行が認められれば20年完工への担保ができる。米軍嘉手納基地以南の施設・区域の返還も動き出し、県民の理解は広がるとみる。菅氏は「沖縄に駐留する米軍のうち約3分の1の9000人がグアムをはじめ国外に移設する」と訴えた。
 1時間半後、沖縄県庁。「沖縄差別の表れだ。県民に『銃剣とブルドーザー』による強制接収を思い起こさせる」。顧問弁護士と並んで記者会見した翁長氏は怒りをあらわにした。県の提訴について「視野に入れながら物事を進めていきたい」と意欲を示した。
 ただ、政府との訴訟合戦が有利に進む保証はない。翁長氏周辺は出直し選や県民投票案も検討する。裁判で敗れても、新たな民意が示されれば、埋め立て承認を改めて撤回できるとみるからだ。
 沖縄は16年が選挙イヤー。1月に宜野湾市長選、夏に県議選と参院選を控える。同じように選挙が相次いだ14年は名護市長選や知事選、衆院選で辺野古反対派が勝利した。
 倒れるのはどちらが先か。エスカレートする対立は、政権と翁長氏のチキンレースの様相を帯びてきた。


95年とは、沖縄県内の米軍用地強制使用の代理署名をめぐり、当時の村山富市首相が大田昌秀知事を提訴したという裁判のことであり、翌96年に県側の上告が棄却されて沖縄の敗訴が確定します。
そもそも、海や海岸部は国有地であり、県はその埋立承認を国から事務委任されているに過ぎず、県がどうこう言った所で国は「自分の所有地をどうしようが関係ないでしょ」というだけのお話です。
だから、司法の場に持ち込んだとしても国が勝つのは当然で、正直言って翁長知事は無駄に足掻いているだけにしか思えないのです。
「反基地は票になる」、仲井真前知事が証言しているように、翁長知事も多分に政治的思惑でもってこうした運動をしているのでしょう、しかし「沖縄差別の表れだ。県民に『銃剣とブルドーザー』による強制接収を思い起こさせる」などとゴネるのはどうかと思います。
まして、基地受け容れの反対給付が沖縄振興策だというのは、誰もが分かっていることであり、カネだけ取って負担は嫌がるのかという批判は、沖縄県民にとってもあまり気分がいいものでないでしょう。

地政学的環境から沖縄が日本やアジアにとって安全保障上重要な地域であることは、論を俟たないと思います。
太平洋戦争において、なぜ米軍が真っ先に沖縄占領を目指したのか、そして今もって海兵隊や空軍など在沖米軍が駐留しているのか、アメリカだって戦略的に価値がないならさっさと軍を引き揚げます。
アジア有事を想定すれば、日本もアメリカも沖縄が橋頭堡になるわけで、これが嫌だからと言って島ごとどこかに引っ越すわけにもいかないのです。
これさえ理解できていれば、むしろ沖縄がパワーの空白域になることの方がいかに危険であり、沖縄の安全保障にとっても大問題だということになります。
それを「沖縄差別」と問題をすり替えるのは、本当に現実を直視していないのか、それとも票やおカネ目当ての強請なのかでしょう。
菅官房長官との会談でも、最後まで抑止力の意味が分からないと知事は発言していましたので、理解力に乏しい御仁が首長になった不幸を県民も嘆かなければなりません。

手続論でも負け、司法でも負け、最後は民意に訴える、法と秩序を守るべき知事が率先して大衆扇動しようということですね。
移設反対で当選したのだから、やるだけやらないと立場がない、もしそうならば政治家としてどうかと思います。
実際に行政を担う立場になったら現実論に立つ、これは決して間違いでありません。
民主党政権も批判はありましたが、現実路線に軌道修正したわけですし、人々が行政に求めるのは活動家でなく、実務家のはずです。
勝てる闘いでもないものに行政のエネルギーを注ぎ込み、本来やるべき普天間返還後のプランをおざなりにするのは沖縄にとっても日本にとっても不幸です。


posted by 泥酔論説委員 at 18:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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