2015年11月17日

仏、対テロ戦に決意 大統領「空爆を強化」 市民、報復の連鎖を懸念 首相「シリアで犯行計画」

17日朝刊2面【総合2】パリ=竹内康雄
 13日夜に起きたパリ同時テロへの報復措置として、仏軍は15日、犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆に踏み切った。オランド大統領は16日の演説で「われわれは戦争状態にある」と強調し、断固とした決意でテロとの戦いに臨む姿勢を示した。ただ、仏国民の間では新たなテロを心配する空気も強まっている。
 バルス首相は16日、仏ラジオ番組で「テロはシリアで計画された」と明らかにした。詳細な言及は避けたが、少なくとも2人の実行犯はシリアに渡航した経歴がある。うち一人はISと接触した経歴が確認されている。
 なぜフランスが再度、テロの標的になったのか。直接のきっかけは、仏軍によるISへの空爆だ。フランスは2014年にイラク領内のISへの空爆を始め、今年9月にはシリア領内に広げた。同時テロの実行犯の一人が「シリアを攻撃した罰だ」と叫んだとの報道もある。フランスは米と並び、ISの攻撃対象の筆頭候補になっている。
 フランスはシリアの旧宗主国で、もともと関係が深い。11年にシリアで内戦が始まった際は、アサド政権の独裁体制を批判し、圧力を強めた。
 フランス国内で暮らすイスラム系の住民の間で、仏社会に対する不満が高まっているという事情もある。フランスでは政教分離が徹底しており、11年にはイスラム教徒の女性が顔などを隠すブルカを公共の場で着用することを禁止した。
 こうした動きを「差別」と感じ、社会からの疎外感を抱える移民系の若者が増えている。過激思想に染まり、シリアやイラクに渡る者が現れた。多くの移民を受け入れてきたフランスは「テロリスト予備軍」が、欧州で最多の2000〜3000人いるという。
 「シリアでの作戦を強化する」。オランド大統領は16日、国会議員らを前に力説した。仏空軍は15日、シリア域内のIS拠点への空爆を実施。10機の戦闘機が20の爆弾を投下し、関連施設を破壊した。同日にはルドリアン仏国防相とカーター米国防長官は電話会談で空爆を強化することで一致した。
 仏軍の空爆に成算があるわけではない。空爆だけでISを壊滅に追い込むのは難しい。仏国内では今回の同時テロをきっかけに「地上軍の派遣を検討すべきだ」との声も一部で上がる。
 しかし、自らの被害が大きくなりかねないだけでなく、さらなる報復テロが起きるリスクも格段に高まる。攻撃が反撃を生む負の連鎖に入り込む懸念は消えない。「我々はこの脅威と当面、向き合って暮らさねばならない」。16日、バルス首相はこう語った。


テロの標的とされた原因をいろいろ忖度するのは、あまり建設的ではありませんし、第一にそうやって世論分断を図ろうというテロリストの意図どおりになる恐れがあります。
攻撃されたのは、そこが脆弱だったからであり、「鎖は弱い所から切れる」ということです。
守りを強くし、「聖域」を潰していくという教科書どおりのオペレーションしかないわけで、フランスの国内事情にいろいろ要因を求めたところで何ら解決しないのです。
そこで問題なのが、空爆だけで成算があるのかということですが、これは勿論無理だと言わざるを得ません。
第一次大戦後でしたか、所謂「空軍万能論」というのがあり、第二次大戦後もエアパワーを過大に見積る傾向がありました。
しかし、湾岸戦争やアフガン・イラク戦争とも「ブーツオン・ザ・グラウンド」だったわけで、対テロ戦に関わる諸国は陸兵の派遣をどこかで決断せざるを得なくなると思います。
ここから先は、軍事的要請と言うより政治的マターなのでしょう、であれば「戦争を止める」という公約で当選したオバマ大統領は、大きな派兵を決断できないことになります。
あるいは、フランスでも「極右政党」と呼ばれる国民戦線が社会党のオランド政権に代わらない限り、空爆でお茶を濁すしかないのだと思われます。

一方で、ロシアが主張しているようにシリアのアサド政権を支援して対IS作戦の中核にしようというのは、非常に魅惑的な構想です。
もともと、シリアとイラクでの「内戦」なのですから、時の政権が解決すべき事態であり、外国軍が勝手に空爆したりするのも筋としてどうかと言うことです。
アメリカがイラク軍やクルド民兵を支援して対IS戦を行っているように、シリアでもシリア軍を押し立ててISに当たらせるのは、決して間違いではありません。
問題なのは、「レッド・ラインを越えた」とかでアサド政権打倒を宣言してしまったオバマ大統領の対応です。
戦略的見地にたてば、先の見通しなく宣言した「レッド・ライン云々」はかなりナイーブなものであり、まずは当面の敵であるISに対抗するため引っ込める必要があります。
戦略とは優先順位をつけることだと言われてますが、アサドもダメ、ISもダメだってのでは戦略も何もありません。
ウクライナ・クリミア半島のことでプーチン大統領にやられっぱなしなのも分かりますが、ここはロシアの構想に乗ってみるのが戦略というものでしょう。
ところが、G20でもオバマ、プーチン両大統領がこの問題について、ロビーのソファーでしか話ができてない、そこに同席したのがロシア側通訳とライス安全保障担当補佐官の4人だけという有り様で、米ロがこれではISに対抗なんてできません。
オバマ政権が終わるまで、ISはまだまだ延命するのではないかと思わざるを得ませんね。


posted by 泥酔論説委員 at 09:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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