2015年11月16日

実行犯、周到に準備 偽造旅券で入国か 仏過激派と連携

16日朝刊2面【総合・政治】パリ=黄田和宏
 13日夜にパリで起きた同時テロの実行犯の身元などが徐々に明らかになってきた。過激思想を持つフランス人のほか、シリアからの難民を装って入国したとみられる人物も含まれる。「多国籍」のメンバーで構成するグループが共同で犯行に関与した疑いが強まっており、ベルギーのグループが重要な役割を担っていたとの見方も浮上している。
 約80人が死亡したバタクラン劇場の実行犯の一人はパリ郊外クールクーロンヌの出身の29歳のフランス人の男、オマル・イスマイル・モステファイ容疑者(死亡)とみられる。アルジェリア系で軽犯罪歴がある。5年ほど前から過激思想に傾き、治安当局が警戒していた。事件の聴取のため、モステファイ容疑者の家族も警察に拘束された。
 パリ郊外サンドニの競技場「スタッド・ド・フランス」近くで起きた2回の爆発事件では、現場からシリアのパスポートが発見された。難民を装ってギリシャから入国したとみられる容疑者の一人が関与したもようだ。
 検察当局は、この人物と過激派組織「イスラム国」(IS)との関係について捜査している。一方、米CBSニュースは米情報当局者の話として、パスポートが偽造された可能性があるとの見方を示した。トルコで作成されたとの指摘もある。
 さらに、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、死亡した実行犯の一人と見られる人物が、テロ当日のフランス代表とドイツ代表のサッカーの親善試合の観戦チケットを保有し、競技場に入場しようとしていたと報じた。競技場ではオランド仏大統領やドイツのシュタインマイヤー外相のほか、両国の多くの要人が観戦していた。場合によっては被害が拡大していた可能性もあった。
 捜査はフランス国外にも広がっており、ベルギーの放送局は実行犯の2人がブリュッセル在住との情報を伝えた。15日までにベルギーとフランスにまたがる地域で7人が拘束された。ベルギーのグループが今回の犯行で重要な役割を担った可能性がある。バタクラン劇場の銃撃では、現場でベルギーナンバーでグレーのフォルクスワーゲン車「ポロ」が確認されており、車内からブリュッセルのモレンベーク地区の駐車場の利用券が発見されたとの情報もある。
 ベルギーでは近年、過激思想を持つ活動家が増えている。英ロンドン大学キングス・カレッジの過激化研究国際センターによると、ベルギーは人口100万人あたり40人の割合で戦闘員をシリアやイラクでの活動に供給している。この比率では欧州で最高水準だ。


もともとISは、イスラム国家の樹立を目的としてイラクそしてシリアの支配を進めてきたもので、アフガニスタンにおけるタリバンのようにローカルな過激派だとされています。
一方、アル・カイダはグローバル規模のジハードを遂行しようと、小規模な秘密結社を作り、世界中で「国際テロ」を起こしてきました。
ビン・ラディンがイエメンからアフガニスタンに活動拠点を移したのも、彼らの庇護者がタリバンだったからで、「国際テロ組織」はこうした「聖域」を確保し、そこに人材をリクルートし資金を集め、世界に散らばらせるという活動を行ってきたわけで、対テロ作戦としてはいかに「聖域」を潰していくかに話は尽きます。
ISが非常に特異的なのは、地域支配を目指すタリバン的性格であると同時にアル・カイダ的な国際テロ組織を内在させている点だと思います。
これについて、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)で池内恵氏は「二〇一四年六月以降のモースル制圧やシリアでの支配領域拡大によって、『イスラーム国』は、アル=カーイダの流れを汲む国際テロ組織としての性質と、ターリバーン的に内戦・紛争の中で台頭して領域支配を行う土着勢力としての性質の両方を、兼ね備える存在となった」と指摘しており、専門家もISによる国際テロの危険性をかなり早い段階で認識していたことになります。
にも関わらず、欧米の治安・情報当局に察知されることなく、大規模なテロが実行されたことが一番の衝撃なのではないでしょうか。

巷間、アル・カイダは残虐的なISを敵視しているとも言われていました、しかし先日もリビアではアル・カイダの元メンバーで現在はIS幹部のアブ・ナビル容疑者が米軍の攻撃で殺害されたとされており、アル・カイダからISへの人的流出を物語っています。
あるいは、アル・カイダ系と呼ばれていた各地域のテロ組織がISに忠誠を誓うなど、テロ界隈でも栄枯盛衰が激しいのだと感じます。
流行り廃りではありませんが、国際テロ組織業界ではアル・カイダはもうダメで、これからはISだということなのでしょう、人が流ればおカネも流れるというお話です。
では何故、地域支配のISが国際テロなのか、それはアル・カイダのグローバル・ジハード戦略とは違い、戦術面での作戦だと考えます。
欧米に加えて、ロシア、トルコによる空爆が奏功してきているのではないか、これに対抗するには相手国の国内世論に厭戦気分を喚起させる以外に方法はありません。
テロとは、相手に嫌がらせして行為を止めさせることであり、このまま空爆を続けていると欧米の無辜の民がどんどん死んでいくぞという脅しなのです。
従って、ロシアの旅客機墜落もISの手によるテロだと考えた方がいいでしょうし、今後はますます苛烈になると警戒すべきです。
しかも、テロの国際ネットワークはアル・カイダ時代に確立し、IS自身が作戦を立案・遂行したりしなくとも、現地の事情に通じている地元出身でISに忠誠を誓う人物や組織をリクルートし、資金や武器などアセットを与えればテロが実行されてしまうのです。
海外の地元企業を買収し、経営を任せているようなお話で、参入障壁がかなり低いと言わざるを得ません。
しかし、対テロの教科書どおり、これもシリア・イラクという「聖域」があればこそで、「聖域」を潰していく以外にテロとの闘いには勝てません。
しばしば、「暴力の連鎖」という建前で、対テロ戦争を非難する向きもありますが、戦争である以上、どちらが勝つかという以外に道はないのです。
posted by 泥酔論説委員 at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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