シリアに空爆を続けるロシアのプーチン政権がシリア内戦の収拾に向けて外交攻勢も強めている。和平協議の主導権を握ってシリアでの権益を確保するほか、軍事介入の長期化を避ける思惑があり、23日には米国などに独自の「和平案」を提示した。アサド政権の退陣を求める米国との立場の隔たりはなお大きく、4年半に及ぶ戦闘が終息に向かうか予断を許さない。
複数のアラビア語メディアによると、和平案はロシアのラブロフ外相が23日の米、トルコ、サウジアラビアとの4カ国外相会談で示した。具体的には来年1月までに反政府勢力「自由シリア軍」(FSA)と政府軍の戦闘を停止し、議会選を経て暫定政権を樹立。1年半の移行期間後に新憲法下で大統領選を実施するという道筋を描く。
「和平案」は「シリアの将来はシリア国民が決めるべきだ」(ラブロフ氏)との立場から、アサド氏の将来の大統領選出馬の可能性を否定していない。ただ、ロシアのプーチン大統領は「ロシア軍基地などシリアでの権益が守られるならアサド政権の延命に固執しない」(ロシア国防省筋)とされる。アサド氏が加わらない形の暫定政権の発足で関係国が歩み寄る余地は残した格好だ。
ケリー米国務長官は23日の会談後、4カ国外相による協議が30日にも再開するとの見通しを示した。24日からは連日、ラブロフ氏と電話し、ロシアの和平案を含めた内戦の解決策について話し合った。サウジのジュベイル外相は25日、4カ国協議について「幾分、進展があった」と語った。
とはいえ、米オバマ政権が抱くロシアへの不信感は根強く、議会選も公正に実施できるか危ぶむ声も少なくない。ケリー氏は24日、サウジの首都リヤドを訪れアサド政権と敵対するサルマン国王と会談。外交による解決を模索しつつも穏健派の反政府勢力への支援を強化することで一致した。
ロシアとしてはオバマ政権が今回の案を丸のみする可能性が低いのは見越したうえで、「たたき台」の位置付けで協議に一石を投じ、米などの出方を探る意向のようだ。
米ロが事態収拾を急いでも、シリア国内で激戦を続けるアサド政権と反政府勢力が和平に応じるか不透明な要素も残る。プーチン氏は22日、アサド氏が対話に前向きになったとの見方を示したが、国営シリア・アラブ通信によると同氏は25日、反政府派との対話に先立ち「テロリストの根絶」が必要と強調。FSAを含めた反政府派への攻勢を強める決意を表明した。
ラブロフ氏は24日、FSAにアサド政権との対話を始めるよう求めた。米ロの共通の敵である過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う場合、空軍による支援を与える用意があるとも語った。ただ、FSAの報道官は26日、英国放送協会(BBC)のインタビューで「ロシアの支援はいらない」と明言。FSAに対する空爆の即時停止を求めた。
シリアにおいても、ロシアが主導権を握ったということになります。
それは、アメリカが外交的にも弱体化している証左であり、後からやってきたロシアが和平プロセスを提案するという事態を招いているのです。
おそらく、ウクライナと同じようにプーチン大統領のペースで進むのでしょう、そうなれば当然、ロシアに有利な形で和平交渉が行われることになります。
オバマ大統領は一体何のために、「レッド・ラインを越えた」とか宣言したのか、よく分からないままシリア情勢は新たな局面に入っています。
そして、シリアからイラクへとロシアの影響力は広がるのだと思います。
アメリカは対IS作戦として、米軍の人的損害が少ない空爆やドローンによる攻撃を中心としてきたとされていましたが、10月22日にイラク・ハウィジャ近郊で行われた人質救出作戦で米デルタ・フォースの隊員が戦死したことにより、実際は「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」であることも明らかになりました。
彼らは所謂「軍事顧問団」という肩書ですけど、単なるアドバイスや訓練教官だけでなく、実戦に従事していたわけであり、オバマ大統領の言ってることとやってることの矛盾が問題となっています。
ここから先は想像ですが、特殊部隊員の戦死は長く伏せておける話だったのに、いま明らかにしたのは軍の意向ではないかと思うのです。
しかも、彼の戦死を契機に作戦の状況映像をメディアで放映させると、やはり米軍が作戦に深く関わっていることが誰にも分かります。
大統領の言うとおりの空爆だけではISを壊滅できない、だから軍は地上戦にコミットしているのだというアピールではないか。
アメリカ人はこれをどう思うか、もちろん大統領は面目を失いますが、軍の行動は当然ではないかと支持すると思います。
ただ一方で、かつてのベトナム戦争でもフランス軍が北ベトナム軍に破れた後、南ベトナムの共産化を恐れたアメリカが「軍事顧問団」を派遣し、それが直接介入に繋がっていった記憶もまだ米国内に残っています。
対ISにおいても、アメリカがどこまで介入するかの線引は難しく、だが深い所まで入り込んでいるというのが実態でしょう。
そして,やはり同じく空爆や軍事支援だけと言ってきたロシアにとって、アメリカの「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」は更なる介入の口実ともなります。