訪米中の韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は16日、首都ワシントンでオバマ米大統領と会談した。会談後に北朝鮮の非核化の実現に向けた米韓の協調体制を確認する共同声明を発表。安全保障で最大のパートナーの米国との友好関係を演出し、日米などで高まる中国傾斜論の払拭を狙う。朴大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)に積極的に参加を検討する韓国の立場について米国の理解を得たい考えだ。
両首脳は16日昼ごろ(日本時間17日未明)に会談した。北朝鮮の核・ミサイル問題に共同で対処する方針を確認したもようだ。終了後に共同声明を発表する。北朝鮮は依然核開発を続ける姿勢を示し、事実上の長距離弾道ミサイルの発射の可能性もくすぶる。こうした挑発行為に強力に対応する一方、非核化の進展に合わせて経済支援などの道筋を示す内容になるとみられる。
朴大統領は15日の米戦略国際問題研究所(CSIS)の講演で「北朝鮮の核放棄と改革・開放を誘導するために韓米同盟がリーダーシップを発揮すべきだ」と訴えた。さらに「韓国は(アジア太平洋に戦略の軸足を移す)米国のリバランス(再均衡)政策の核心パートナーだ」と述べ、連携拡大の必要性を強調した。
朴大統領の姿勢には韓国に対する中国傾斜論を払拭する狙いがある。韓国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を決め、9月に朴大統領が中国・北京の「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年」の式典に出席したことで、米国や日本では中国に寄りすぎだとの懸念が高まっている。中国の海洋進出に警戒を強める米国の懸念は「韓国政府が思っている以上に強い」(ソウルの外交筋)との指摘もある。
朴大統領とオバマ大統領との会談は今回で4回目だが、中国の習近平国家主席とは既に6回会談した。経済面では中国との結びつきが強く、2014年の貿易総額は2353億ドル(約28兆円)と米国の2倍超に上る。米主導のTPPより、中韓自由貿易協定(FTA)を最優先の交渉対象と位置づけてきた経緯もある。
朴大統領は講演でTPPの大筋合意を歓迎し、「TPP参加10カ国とFTAを結ぶ韓国はTPPでも米国のパートナーになりうる」と述べ、参加に意欲を示した。一方で「北朝鮮に関連して韓米中の新しい協力も強化する必要がある」と指摘。安保は米国重視、経済は中国重視とされる韓国だが、米中二大国との関係をバランス良く強化したい思惑が透けて見える。
15日の米韓国防相会談では韓民求(ハン・ミング)国防相が、韓国が開発中の国産戦闘機「KFX」に関連して、標的の追跡・探知能力に優れたレーダーなど4件の核心技術の移転を米側に求めた。カーター国防長官は安全保障上の技術保護を理由に難しいとの立場を示した。韓国の姿勢は米国の信頼を完全に得られていないのが現状だ。
朴槿恵大統領としては、中国とアメリカという大国の間で上手く外交しているつもりなのでしょう、しかしそれは中米ともに韓国を信頼するに足らずと見られていることにもなります。
朝鮮半島の歴史を振り返ると、有史以来近代まで、朝鮮の王朝は常に大陸の方だけ顔を向けていればよかったのですが、中国が衰えるに従い、ロシアと日本の間で立ち回ろうとして失敗します。
日本の支配が終わり、力の空白域が半島に出来ると、空白を埋めるべく米ソが進出し、それが38度線で止まったというのがここ60年間の概略です。
しかし朝鮮戦争時、あまりにも韓国兵が弱兵で、あやうく主力の米軍が中共軍に包囲殲滅させられるような出来事や、李承晩大統領の無茶苦茶ぶりなどから、アメリカは韓国を信用してきませんでした。
そもそも、太平洋戦争が終結したら半島を信託統治化しようと連合国が考えたのも、ここは独立できるだけの政治的能力はない、と見做されていたからであり、朝鮮戦争前にアチソン米国務大臣がアメリカの防衛ラインを日本まで下げようと半島防衛を放棄したことをもっても(それがソ連、北朝鮮の南下戦略を動機づけました)、戦略的価値をそれ程置いてなかった証左でしょう。
もし、冷戦が欧州で激化してなければ、北朝鮮の侵攻にアメリカは強く抵抗しなかったでしょうし、半島は赤化で統一されていたのだと思います。
それはそれで、半島を戦略的バッファーとしてきた日本にとって非常に大きな問題なのですけど、アメリカのスタンスはそのようなものだったということを知っておく必要があります。
半島の歴史からすると、二国ないし三国に分裂していた時代の方が長く、それぞれの国はどれだけ宗主国たる中国王朝に忠誠を示すかの競争で存亡が決まったものです。
大陸から2000回もの侵略を受けたとされる半島にあって、負ければ滅亡、勝っても朝貢を許されるだけという苛烈さがあったわけで、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや、云々」などという、恐れを知らない人たちには到底理解できないトラウマが民族の記憶に埋め込まれているのだと思います。
朝鮮の人たちからすれば、これが儒教で言う「礼」なんだ、物事の道理なんだ、という話で、「だから日本人は礼を知らない」とかいうことにもなります。
その中国が、共産党王朝として100年ぶりに隆盛してきた、忠誠を誓ってきたはずの北朝鮮とも疎遠になってきた、これは機会到来と韓国が感じたのも民族が抱えるトラウマのなせる所でしょう。
だが、中華帝国がアジアを支配していた近代以前ならまだしも、グローバル化が進んだこの現代にあって、対立している大国の間を上手く遊泳できるというのは半島の人の「理想」ではあれど、現実ではありません。
どちらに付くのか、日本以上に国際政治の厳しさをあまり経験してこなかった韓国にとって、この国は信頼するに足るのか足らないのか、アメリカと中国からそれぞれ試さることになります。