2015年10月14日

VW、エコカー戦略転換 ディーゼルから電気へ 排ガス不正受け投資削減

14日朝刊1面 フランクフルト=加藤貴行
 欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)はディーゼル車の排ガス不正問題を受け、環境対応車(エコカー)戦略を転換する。従来のディーゼル車偏重を見直し、電気自動車(EV)の開発へ軸足を移す。ディーゼル車のイメージ悪化に加え、業績悪化で投資の選別が避けられないためだ。EVで出遅れていたVWの戦略見直しは、技術開発や規模のメリットを狙った新たな戦略提携の呼び水となる可能性もあり、競合他社や部品メーカーにも影響を与えそうだ。
 VWは新たに小型EV専用の車台(プラットホーム)を開発。高級車ブランドのアウディや大衆車のシュコダなどグループ企業の間で、電池だけで250〜500キロメートル走行できる車種を対象に共有する見通しだ。モーターや蓄電池などの基幹部品も共通化し、開発・生産コストを抑制する。
 一方、基本的に家庭で充電し、走行中にエンジンを補助発電機として使うプラグインハイブリッド車(PHV)の開発にも重点的に取り組む。
 VWは2015〜19年に総額1076億ユーロ(約14兆5千億円)の投資を計画していた。ただ今回の不正対象車は世界で1100万台に上る。リコール(回収・無償修理)や規制当局による制裁金、消費者からの訴訟などによって業績の大幅な悪化が避けられない。このため乗用車部門の毎年の投資額を計画の5%弱に相当する10億ユーロ削減する方針も明らかにした。
 独紙ハンデルスブラットは13日、VWが部品メーカーへの原価低減要請で約30億ユーロのコストを削減する計画だと報じた。
 絞り込む研究開発などへの投資を、EVへと優先的に振り向ける。VWはエンジンをモーター・蓄電池が補助するハイブリッド車の開発でトヨタ自動車などに後れをとった。このため排ガス不正が発覚するまでは、燃費性能に優れたディーゼル車をエコカーの中心に据える一方、EVに徐々に移行する戦略を掲げ、13年ごろからPHVやEVの市販を開始していた。
 VWは主力小型車「ゴルフ」などにEVやPHV仕様を設定しているが、グループの販売全体に占める割合はまだ小さい。ただしアウディは1回の充電で500キロメートル走行できる多目的スポーツ車(SUV)を18年に発売する計画で、開発自体は進んでいる。
 VWは現在、世界販売の2割強をディーゼル車が占める。欧米向けのディーゼル車には、有機化合物の尿素を使う高機能な排ガス浄化装置を全面的に採用する。ただ不正に伴うイメージ悪化で当面の販売低迷は必至。欧米当局は排ガス試験の運用を厳しくする方針を打ち出しており、コストが上昇する可能性もある。
 欧州など主要市場で環境規制が厳しくなる中、ディーゼル車からEVへのシフトを鮮明にする。EVは高い販売価格が普及のハードルとなり各国政府の補助金に頼っている面が強い。


ここでディーゼルからEVに軸足を移すのは、フォルクスワーゲンにとって致命的な戦略ミスになりかねません。
そもそも論として、トヨタがハイブリッドで世界市場に打って出てきた時、VWには迎撃するだけのエコ技術を持ちあわせていなかった、仕方なく伝統技術でもって「クリーン・ディーゼル」とエコを謳い、しかしそれでシェアを取ろうと無理したがために今回のような問題となったわけです。
CO2とNOx、PMという化石燃料車の排出ガスにどう対応するのか、ディーゼルはCO2こそガソリンエンジンに較べて少ないと言われてますが、NOx、PMはフィルターなどで高度な処理するしかない、しかし大衆車を標榜するVWのような小型ディーゼルはパワーに余裕がなく、処理をすればするほど燃費が悪くなり、走りも悪くなるという原理的な課題を抱えています。
じゃあ、検査の時だけ処理をかけりゃいいじゃないか、燃費や走りはユーザーが気にすることであって、検査には関係ないということでソフトを組み込んだとされています。
欧州の検査機関だってディーゼルが抱える宿命を知ってるのですから、VWのソフトにはとっくに気がついていたと思いますし、「そうじゃないと売れないだろ」というのでお目こぼしをしていたのだと想像します。
ただ、緯度的、地形的にNOxが上空に滞留し易い北米西海岸の検査基準の厳しさがVWにとって鬼門だったわけで、とにかくエコを看板にしたディーゼルを売りまくってシェアの拡大と時間稼ぎしている間に、次世代のエコカーを開発・投入していこうという彼らの戦略は今回頓挫したと見るべきです。
じゃあ、イメージが悪いからとディーゼルを捨て去って、先行メーカーに勝てるEVだかPHVだかの技術力がVWで育っているのかと言えば、そうではないと思います。
先行メーカはこれまで市場に投入した多くの実績を更に研磨し、頂上を極めようとしている時に、VWのはまだ道半ばなのです。
逆に言えば、安価で良質なEV技術が確立していればディーゼルなんかに頼らずとも、そっちにシフトしていたし、今回のような問題も起こらなかったのです。
ここに来て、戦略を転換してEVを前倒し投入するというのは、経営的に非常に危険な選択です。
ドイツにとって、VWのプレゼンスは大きいものがあり、経営が立ち行かなくなっても政府が救済するでしょうが、それがドイツ凋落の象徴になるような気がしますね。


posted by 泥酔論説委員 at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック