20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は5日、金融市場安定に向けた協調を柱にすえた共同声明を採択し、閉幕した。世界的な株安の引き金を引いた中国に各国が集中砲火を浴びせる異例の展開となったが、市場不安の根源ともいえる米国の利上げ問題にも水面下では非難が集中した。世界経済の減速懸念が深まる中、米中両大国が激しく確執を演じ、痛み分けとなった。
4日夕の世界経済を巡る全体会合。トップバッターに指名された中国の楼継偉財政相が演説を始めると、会場の大ホールは静まりかえった。元切り下げについて「修正は一度限りで、累積した元安圧力は解消された」などと楼氏は説明した。
G20の演説は慣例で国際機関に始まり米、ユーロ圏と流れる。今回は日米などが「最も関心の高い」(同行筋)中国を1番手に押し上げた。
日米やドイツの当局者は入念に「包囲網」を構築した。ルー米財務長官が「輸出でなく消費主導成長への移行が肝心」と踏み込むと、日独に続きカナダや欧州勢も次々と構造改革に注文をつけた。2時間以上に及ぶ討議をじっと聞いていた楼氏。終了後、中国の代表団はぶぜんとした表情で会場を立ち去った。
「中国を巡る誤った臆測で世界中の投資家がおびえている。徹底した事実解明が必要だ」(ホッキー豪財務相)。中国に割いた討議時間に比べ、もう一つの焦点だった米連邦準備理事会(FRB)による米利上げを巡っては「直接(意見が)出なかった」(麻生氏)。だが実際には各国代理級の声明案協議では、1カ月以上にわたり米中による「なぐり合い」(G20当局者)の対立が続いた。
「米が焦って利上げしようとするからだ」。G20当局筋によると、中国側は利上げが世界的なマネー変調と株安の引き金だと主張。ブラジル、インドネシアなど通貨安と株安に見舞われる主要新興国も米批判に同調した。一部の新興国側は声明でFRBの名指しを迫り、米側が猛反発した。「4日発表の米雇用統計も踏まえ経済データ次第で決める」。欠席したイエレンFRB議長に代わり、フィッシャー副議長は安全運転に終始した。
「(バブルが)はじけたような動きがあった」、中国人民銀行の周小川総裁は会議で3度繰り返したそうです。
日本がそうであったように、バブルは崩壊する時よりも崩壊した後の方が長く深く経済・財政への影響が大きいことが知られています。
しかし中国当局は、バブル崩壊を食い止めようと株価や為替対策に狂奔しており、麻生太郎財務相はそれを「普通の国ではないような市場介入だった」と批判しています。
バブルは必ず崩壊するし、それを政府・中銀が食い止めることはできないと言うのが経済の経験則だと思います。
食い止めているようでいて、実態はもっと深刻な状況に陥っているわけです。
日本の場合、「バブル退治」と称した総量規制や貸出規制など当局による意図的なバブル崩壊と、崩壊後も金利操作だけで凌ごうとした明らかな政策ミスが、不良債権問題からデフレへと20年近く続く不況の原因だったのです。
根本的な対応策であった構造改革路線は、小泉内閣の登場まで待たねばならず、それも遅きに失したという感があります。
これに照らし合わせると、G20で各国から表明された中国に対する構造改革の注文は尤もな話で、中共政府はこれを真摯に受け止める必要がありますが、果たして習近平政権にその気があるのか疑問が残ります。
構造改革とは、「腐敗撲滅」のようなこっちは善で向こうは悪のような単純な話でなく、中国の経済産業構造を変えて行こうという政府にも国民にも「痛み」を伴う改革なのです。
「痛み」をハッキリと人民に説明し、実行できるのか、ここが政治のポイントとなります。
一方、アメリカの利上げについて、これは中国だけを悪者にしないよう「お供」に添えただけであると考えます。
実際、米経済の統計値は改善されてきており、そろそろ出口戦略を探ろうかというのは去年から議論されてきたことです。
従って、遅いか早いかのタイミングの問題はあれど、どこかで利上げは実施されるのでしょう。
イエレン議長も出口戦略派ですし、あとは技術的な部分なだけで、利上げそのものは市場もすでに織り込み済みだと思います。
新興国が嫌がっているのは、新興国市場に入っている投資が利上げによって有利となった米市場に吸い上げられてしまうから、という理由です。
かつてはBRICsなどと元気だった新興国市場ですが、今ではすっかり弱り目に祟り目で、投資を留めておくだけの魅力に欠けています。
このあたりはFRBも承知していますし、「市場との対話」重ねながら予見可能な形で利上げを行っていくのでしょう。
同じ金融政策でも、中国とアメリカではこれだけ近代性に格差があるというのが今回のG20でも明らかになりました。
構造改革もしかり。
改革が成功してるからこそ、
すなわち解決のための適切な手段をこうじていないからこそ
バブル崩壊の後遺症は解決されないのです。