野田佳彦首相は3日、20カ国・地域(G20)首脳会議で、消費税率引き上げを事実上の国際公約として表明した。民主党内でも増税反対論が根強く、消費増税準備法案の行方は不透明。それでも首相は法案成立前には衆院解散・総選挙に踏み切らない考えを記者団に示し、世界的に関心が高い財政再建問題で政権の命運を懸けたともとれる。消費税増税問題は解散と絡み野田政権の行方を左右する。
首相はG20で「2010年代半ばまでの10%への引き上げ」を明言。その後、「各党とも一緒に議論したい」と記者団に強調し、10%への消費税率引き上げを掲げながら与野党協議に消極的な自民党に協力を迫った。
最初の関門は民主党だ。首相は記者団に消費増税法案では「実施時期を定める」と強調したが、まずは党執行部が引き上げ時期や増税幅など具体案の決定を目指す12月中下旬がヤマ場になる。
選挙基盤の弱い若手議員を中心に消費増税に反発が出るのは必至。東日本大震災の復興費用を賄う臨時増税や環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加問題より風圧は強く「決定が年明けにずれ込む可能性もある」(党税制調査会幹部)との懸念が早くも出ている。
年末に決定する来年度予算案を巡り、藤村修官房長官は4日の記者会見で、将来の消費増税を織り込んで編成する考えを表明した。基礎年金の国庫負担分のうち2兆5千億円を、将来の消費税収を償還財源とする「つなぎ国債」で賄う意向を示したものとみられる。
政府・民主党が3月を想定する法案の提出では、法案の表現が火種になる。法案の骨格取りまとめで「景気動向を踏まえて」消費税を増税する、と決着した場合、年末は乗り切れても「実際に法案化する段階で具体的にどんな条件を書き込むかを巡り再びもめる」(党幹部)。増税反対派に配慮して厳しい条件を付ければ消費増税は事実上封印されてしまう。
たかだか税率1つで政権の命運だ、解散総選挙だって大騒ぎする国が何処にあるのでしょうか。
税率なんてのは政府の専管事項なんですから、増税するにしろ減税するにしろそれは政策の1つに過ぎません。
消費税問題にしても、社会保障収支のアンバランスを改善する一方策であるわけで、「ムダを削れば財源なんてナンボでもある」というのが全くのフィクションだったと、さすがの民主党でも政権に中の人たちには理解できたからこそ、増税を言い出したのです。
「増税の前にやることがあるだろう」というのも、元を辿ると中曽根内閣時代の「臨調」まで行き着くのですが、自民党政権時代に「やることをやって」しまったので、「ムダ」なんて大してなかったというのが真相です。
徳川埋蔵金があると信じてどっかの山を一生懸命掘ったけど、とっくの昔に徳川家で使い切ってしまってますよ、というお話です。
むしろ、「増税の前にやることがあるだろう」と言うのは、問題を先送りにする絶好の言い訳になっており、やることもないのにやってる振りだけしてりゃいい、というサボタージュにつながるわけです。
これで国民受けがいいなら、政治ぐらい楽な商売はありませんよ。
消費税が景気に与える影響は軽微だと、10月18日付の経済教室で宇南山卓・神戸大学准教授が紹介しています。
宇南山氏がミシガン大学のデビッド・キャシン氏と実施した、97年の消費税引き上げが家計消費に与えた影響についての分析によれば、増税前のアナウンス効果による「駆け込み需要」と増税後の反動減は4ヶ月で収束しているというものです。
これを「代替効果」と呼び、税率の上昇による実質可処分所得の減少を通じ消費を減少させる効果、すなわち所得効果も「消費減は、1世帯・1カ月あたり562円であり、統計的に有意でなかった」「97年時点の世帯数をかけて年次ベースのマクロに換算すると0.3兆円に相当する。これは、国内総生産(GDP)比で0.06%にすぎない。96年度の成長率は2.9%であったが、97年度にほぼ0%に急減速している。その変化と比較すれば、消費税が景気に与えた影響は軽微だった」と結論づけています。
そして、消費税が景気を後退させたとみなされたのは「いわば誤解によるもの」であり、この年の景気は6月に表面化したアジア通貨危機を転換点とみるべきだとしています。

これは、重要な分析ですね。
消費税が景気に与える影響を過大に見積もった結果、増税がタブー視されるのは非論理的な話です。
とは言え、そういう宗教みたいな話で「政権交代」を唱えてきた人たちが、今度はそれで自分たちが交代しなくっちゃならないというのも自業自得なんでしょう。
民主党のブーメラン効果は、すごい精度ですよ。


