2015年10月20日

財務相に苦言「もっと謙虚に」 公明代表

20日朝刊4面【政治】
 公明党の山口那津男代表は19日夜のBSフジ番組で、消費増税時の軽減税率導入に関し「面倒くさいとみんな言っている」と発言した麻生太郎財務相に苦言を呈した。「安倍晋三首相や菅義偉官房長官は国民との公約という大きな立場で判断している。もっと謙虚に受け止めていただきたい」と述べた。
 軽減税率の対象品目は「痛税感を和らげるには、酒類を除く飲食料品が妥当な線だ」と指摘。幅広い品目への適用が必要だとの認識を強調した。


昨夜のBSフジ「プライム・ニュース」では、なぜ公明党の公約が給付付き税額控除ではなく軽減税率なのかという点について、山口代表が明快に語っていました。
ご案内のとおり、税額控除も軽減税率もメリット、デメリットが夫々あるわけですが、決定的なのは税額控除が主として低所得者対策なのに対し、軽減税率は「痛税感の緩和」という政治的、経済的対策であるという所です。
公明党のスタンスから言えば、低所得者層の救済を主張し税額控除を主張していたはずですが、そうではなくて消費増税による日本経済全体のマイナスを緩和し、成長を優先させようというマクロ的視点なのです。
軽減税率の対象を広げれば、社会保障の財源が税収減となることに対しても山口氏は、最初から税収額ありきではない、財源はもっと広く求めていくべきであるとも発言しています。
正直言って、これにはちょっと驚きました。
公明党も与党時代が通算して10年以上になるのでしょうか、しかし政党の支持基盤である創価学会のことを考えると、もっと生活密着的な要求があって然るべきだと思います。
だから、こうしたマクロ的対策を自民党が言うならまだしも、公明党が率先していることに驚くのです。
そう考えてみると、先の安全保障法制について公明党がブレずに最後まで政府を支持してきたのも、この党も責任政党になったのだなと胸に落ちてきます。

「面倒くさいとみんな言っている」、麻生財相ならではの表現であり、山口氏も苦言というより「財務省を代表する立場での発言」と理解を示していましたね。
むしろ重要なのは、前段の「財務省は、本当は反対だ」という部分です。
「本当は反対だけど、公明党に押し切られたので財務省もやむを得ない」というのが言外にあり、実質的に白旗を掲げているわけです。
更にもう一つ麻生氏の発言として、「公明党さん、それ(企業の説得)はそっちでやってくれるんでしょうね。俺たちに押しつけないでくださいよ、としつこく言っている」、という企業の事務負担に対しての財務省からのボールに対し、負担にならない簡易な方法を考えるのが財務省の仕事でしょと昨夜も山口氏は打ち返しています。
例えば、これは既存の請求書やレシートなどに税額記載してエビデンスとする簡易な方法を示唆しているのだと思いますけど、これですと税額が正確に把握できないなどの問題があると言われてます。
しかし、徴税から納税までの事務作業を企業側に委ねる間接税にあって、ある程度の「益税」化は仕方ないのではないか、それ以上の負担は強いられないというのを公明党は示唆しているのです。
ここまで政治的に腹を括っているのなら、いいじゃないか、おそらく安倍首相も公明党の本気度と覚悟を知ったからこそ、軽減税率の導入に前向きになり、動き始めたのだと思います。
与党内の不協和音のように捉えがちなニュースですけど、内実は政党と政党の建設的な議論過程なんだと感じましたね。
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2015年10月19日

南シナ海、国際的支持狙う 中国、軍主催の国際会議で

19日朝刊7面【国際】北京=永井央紀
 中国軍系団体が主催するアジアの安全保障に関する国際会議「香山フォーラム」が18日、3日間の日程を終えて閉幕した。中国は自前の国際会議の場を通じ、南シナ海の領有権問題などで自国に有利な世論形成を図る狙いが透ける。会議には過去最多の49カ国・4国際機関から約500人の政府関係者や有識者が参加し、うち中国との経済関係が深いマレーシア、インドネシアなど16カ国は防衛担当大臣を出席させた。
 「中国は覇権を唱えたり領土拡張したりはしない。皆さんが関心をお持ちの南シナ海の埋め立てが航行の自由に影響することはない」
 中国軍制服組トップの范長龍・中央軍事委員会副主席は17日の演説で強調した。周辺国との摩擦についても「当事者間の話し合いで解決する立場を堅持する」との“平和路線”をアピール。南シナ海をめぐるフィリピンなどとの対立に米国が介入しないよう訴えた。
 中国軍主導の会議であるためか、インドネシアの出席者から「南シナ海が中国の領土であることに異議はない」との発言が飛び出す場面もあった。ただ出席者によれば、参加者の多くは総じて中国の主張を冷ややかに聞いていたという。
 アジアの安全保障に関する国際会議としてはシンガポールで毎年初夏に開かれるアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)が有名だ。
 英国際戦略研究所の主催で、中国脅威論が展開されることが少なくない。
 14年のアジア安保会議では安倍晋三首相が基調講演し、中国の海洋進出を念頭に「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは強い非難の対象とならざるを得ない」と批判。
 その後の討論で中国軍幹部は「漢の時代から中国は南シナ海で活動していた」などと防戦に追われた。
 これに対し、香山フォーラムは06年に学者らを中心とする議論の場として隔年開催で始まった。現役の軍高官が登壇する半官半民の会議に格上げし、毎年の開催に変えたのは、安倍首相が出席したアジア安保会議の約半年後に開かれた14年の会議からだ。
 今回の香山フォーラムに出席したPHP総研の前田宏子主任研究員は「閉鎖的な中国軍が他国の軍人や専門家と交流する機会を提供しているのは評価できる」とした上で「中国寄りの国に発言させて中国の主張を国際的に強めようとの意図を感じた」と指摘する。
 香山フォーラムで現場取材が認められる海外メディアは一部のみで、国際会議の体裁をとりつつも、その機会を恣意的に利用しようとしているとの見方は多い。


秘密的、閉鎖的だった中共軍が、こうした会議を開催せざるを得なくなってきただけでも、日米などによる圧力が効いているということです。
今までなら、ここは我々の固有の領土であり、何をやろうと自由である、他国がとやかくいう筋合いはない、という木で鼻を括ったような反応でした。
しかし、訪米した習近平主席がオバマ大統領より南シナ海問題について問われたり、米海軍を派遣するという情報が流れたりするに至り、さすがに中共政府も危機感を覚えたのでしょう。
こうした関与政策は、対中外交にとって重要です。
中国は、口では傍若無人な大国ぶったことを言ってますが、内心では国際社会に認められたい、評価が欲しい、名誉が欲しいのに、先進国からは何一つ与えられない、このジレンマに悩んでいます。
これはこれで、自分たちは発展途上の後進なんだ、だから援助してくれという、ここ40年ほど彼らが主張してきたからであり、急に金持ちになったからと言って、尊敬してくれ、言い分をとおしてくれじゃ、どうしようもありません。
悲しき成金みたいなお話ですけど、現実としてそうなのです。
安倍首相が言う「法とルールの支配」とは、中国がわたしたちと価値観を共有したいのなら、国際的な法とルールを遵守せよという関与を示唆しているわけで、これに従うことが中国にとって国益なんだよ、と言ってるのです。
中国の海洋戦略は分かり易い事例なだけに、問われているのはここでの彼らの具体的な対応です。
いくら「民間利用だ」「覇権じゃない」「航行は自由だ」と言ったところで、彼らの戦略が転換してない以上、覇権を求めての軍事基地だと判断されるのです。
中国は、すでに言葉ではない、行動で示す段階に来ているわけですが、日本も絶えず彼らに注意を払い、エンゲージメントを強めていく必要があります。
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2015年10月18日

多層下請けの死角 マンション傾斜問題 数十社参加で業務は細分化 甘いチェック体制が改ざんの土壌に

18日朝刊7面【企業】
 三井不動産グループが横浜市で販売したマンションが傾いた問題で、建物と地盤を固定する杭(くい)打ち工事のデータ改ざんが明らかになった。なぜ虚偽データの使用が見過ごされたのか。下請けへ段階的に仕事を発注し、業務が細分化された業界特有の多層構造が、チェック体制を甘くした可能性がある。
 「最近は玄関のドアできしむ音が聞こえた。(騒動によって)目減りする資産価値をどう補償してもらえるのか気がかりだ」。傾いた棟に住む男性は不安を隠さない。
 2007年12月に完成した問題のマンションは4棟で構成し、計705戸ある。このうち傾いたのは1棟。建物の両端を比べると最大2.4センチメートルの差がある。昨年11月、住民らが廊下の手すりの高さに差があることに気付いた。
 問題は杭の工事にあったとされる。マンションを販売した三井不動産レジデンシャルなどによると、一部の杭は地下十数メートルの「支持層」と呼ばれる固い地盤に届いていなかった。なぜこうした事態が起きたのか。
 杭の工事はまず、敷地の複数箇所を掘削調査して地盤を調べる。今回は、全体の工事をとりまとめる「元請け」の三井住友建設が専門業者に頼んだ。この結果を基に、三井住友建設が打ち込む場所や数、長さや太さを決めて473本の杭を手配した。そして、下請けの旭化成建材(東京・千代田)が杭打ち工事をした。
 杭を打つ全ての場所で掘削調査をするわけではないため、実際に工事を始めてみると想定より支持層が深くにある場所もある。「掘ってみなければわからない」(三井住友建設)のが実態だ。準備した杭の長さが足りない事態は十分あり得る。
 旭化成建材の担当者がその事実に気がついたとみられるのは、杭を打ち込むために、ドリルで地面に穴を開けた際だった。このドリルにかかる土の抵抗値を見ると、実際に支持層に届いているかどうかが分かる。抵抗値は波形のデータで記録する。
 杭が短すぎるとわかったのに、長い杭を手当てするのではなく別の杭のデータを転用したり、加筆したりしてしのいだもよう。38本について虚偽データを使い、支持層に届かない杭が発生した。
 さらに16日、新たなデータの不正利用が発覚した。ドリルで開けた穴には杭の先端と地盤を固定するため、セメントを流し込む。このセメント量のデータも改ざんしていた。つじつまを合わせるため偽装の連鎖が広がった可能性がある。セメントが足りなければ、本来の強度を得られない。
 一連の杭打ちは2人1組で作業する。一人は杭を打ち込む建機を操縦し、もう一人はデータを管理する。この管理者がデータを改ざんしたもよう。16日夜に会見した旭化成建材の前田富弘社長は「断定はできないが改ざんはミスではなく悪意を持って施工不良を隠そうとした」と説明した。
 マンションの工事は大まかに、杭を打ち込むなどの基礎工事、柱やはりなど骨組みを造るく体工事、内外装を造る仕上げ工事に分けられる。関連する会社は数十社にのぼることも珍しくない。
 今回の杭打ち工事は、1次下請けが半導体製造装置を主力とする日立ハイテクノロジーズ。2次下請けが旭化成建材だった。三井住友建設は、日立ハイテクノロジーズに工事の進捗状況の確認や、安全の確保を任せていた。同社が間に入ったことも、三井住友建設の旭化成建材に対するチェックの目を甘くした可能性がある。


いわゆる下請けについて言えば、ものづくりやサービスを提供する上で、何でも自社でやってるなんて企業は皆無であり、下請けによる問題発生は何処にだって起こりうる話なのです。
今回のは、住宅という個人にとっては大きな買い物であり、生活そのものであったことに加えて、700戸という規模が社会問題化したのだと言えましょう。
性善説によって施工を任せているわけであり、数値を見れば支持層まで杭が届いてないから杭を足そうとか、セメントの流量が足りないからもっと流そうというためのデータであって、誰もがそれを作文しているとは思いません。
まして地中のことです、もし傾きに住民が気が付かなければ、何十年後かに建物を解体するまで判らなかったかもしれません。
施工した方にもいろいろな理由があるのでしょう、メディア的には「コスト要求が厳しかった」とか「納期管理が厳しかった」という企業=悪、作業者=被害者みたいな安易な構図をつくりがちですけど、それは耐震偽装事件の時だって、デベロッパーが建築士に苛烈なコストダウン要求をしていたとかで批判されていました。
しかし、真相は建築士の能力不足が原因であったわけですし、今回のも作業者に問題があるのではないかと思うのです。

いくらコスト削減だ、納期厳守だと言ったところで、杭やらセメントの継ぎ足し分なんてのは大したものじゃありませんよ。
むしろ、そうした手抜きによる欠陥を出す方が遥かにマイナス面が大きいことは、過去の事例を並べるまでもなく、施主からしたらなんでこんなバカなことをと忸怩たるものがあるでしょう。
施主や施工に問われるのは管理責任であり、だがこうした現場での偽装は見つけにくいというのも事実です。
この物件でも、当初は傾きの原因がよく分からないため、住民への対応がおざなりになっていたと言われてます。
ボーリング調査してはじめて、杭が支持層に届いてないことが判明し、施工の記録を検証し始めたわけで、ここまでしないと原因が特定できなかったのです。
僅かな手抜きのために、全棟建て替えなどいう大事になったばかりか、700世帯もの人々の生活まで変えてしまう、こうした重大な責任を負っていることを現場に徹底していくしかないでしょうね。


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2015年10月17日

韓国「対中傾斜」払拭狙う 米韓首脳会談、北朝鮮対応で声明へ

17日朝刊6面【国際1】ワシントン=加藤宏一
 訪米中の韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は16日、首都ワシントンでオバマ米大統領と会談した。会談後に北朝鮮の非核化の実現に向けた米韓の協調体制を確認する共同声明を発表。安全保障で最大のパートナーの米国との友好関係を演出し、日米などで高まる中国傾斜論の払拭を狙う。朴大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)に積極的に参加を検討する韓国の立場について米国の理解を得たい考えだ。
 両首脳は16日昼ごろ(日本時間17日未明)に会談した。北朝鮮の核・ミサイル問題に共同で対処する方針を確認したもようだ。終了後に共同声明を発表する。北朝鮮は依然核開発を続ける姿勢を示し、事実上の長距離弾道ミサイルの発射の可能性もくすぶる。こうした挑発行為に強力に対応する一方、非核化の進展に合わせて経済支援などの道筋を示す内容になるとみられる。
 朴大統領は15日の米戦略国際問題研究所(CSIS)の講演で「北朝鮮の核放棄と改革・開放を誘導するために韓米同盟がリーダーシップを発揮すべきだ」と訴えた。さらに「韓国は(アジア太平洋に戦略の軸足を移す)米国のリバランス(再均衡)政策の核心パートナーだ」と述べ、連携拡大の必要性を強調した。
 朴大統領の姿勢には韓国に対する中国傾斜論を払拭する狙いがある。韓国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を決め、9月に朴大統領が中国・北京の「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年」の式典に出席したことで、米国や日本では中国に寄りすぎだとの懸念が高まっている。中国の海洋進出に警戒を強める米国の懸念は「韓国政府が思っている以上に強い」(ソウルの外交筋)との指摘もある。
 朴大統領とオバマ大統領との会談は今回で4回目だが、中国の習近平国家主席とは既に6回会談した。経済面では中国との結びつきが強く、2014年の貿易総額は2353億ドル(約28兆円)と米国の2倍超に上る。米主導のTPPより、中韓自由貿易協定(FTA)を最優先の交渉対象と位置づけてきた経緯もある。
 朴大統領は講演でTPPの大筋合意を歓迎し、「TPP参加10カ国とFTAを結ぶ韓国はTPPでも米国のパートナーになりうる」と述べ、参加に意欲を示した。一方で「北朝鮮に関連して韓米中の新しい協力も強化する必要がある」と指摘。安保は米国重視、経済は中国重視とされる韓国だが、米中二大国との関係をバランス良く強化したい思惑が透けて見える。
 15日の米韓国防相会談では韓民求(ハン・ミング)国防相が、韓国が開発中の国産戦闘機「KFX」に関連して、標的の追跡・探知能力に優れたレーダーなど4件の核心技術の移転を米側に求めた。カーター国防長官は安全保障上の技術保護を理由に難しいとの立場を示した。韓国の姿勢は米国の信頼を完全に得られていないのが現状だ。


朴槿恵大統領としては、中国とアメリカという大国の間で上手く外交しているつもりなのでしょう、しかしそれは中米ともに韓国を信頼するに足らずと見られていることにもなります。
朝鮮半島の歴史を振り返ると、有史以来近代まで、朝鮮の王朝は常に大陸の方だけ顔を向けていればよかったのですが、中国が衰えるに従い、ロシアと日本の間で立ち回ろうとして失敗します。
日本の支配が終わり、力の空白域が半島に出来ると、空白を埋めるべく米ソが進出し、それが38度線で止まったというのがここ60年間の概略です。
しかし朝鮮戦争時、あまりにも韓国兵が弱兵で、あやうく主力の米軍が中共軍に包囲殲滅させられるような出来事や、李承晩大統領の無茶苦茶ぶりなどから、アメリカは韓国を信用してきませんでした。
そもそも、太平洋戦争が終結したら半島を信託統治化しようと連合国が考えたのも、ここは独立できるだけの政治的能力はない、と見做されていたからであり、朝鮮戦争前にアチソン米国務大臣がアメリカの防衛ラインを日本まで下げようと半島防衛を放棄したことをもっても(それがソ連、北朝鮮の南下戦略を動機づけました)、戦略的価値をそれ程置いてなかった証左でしょう。
もし、冷戦が欧州で激化してなければ、北朝鮮の侵攻にアメリカは強く抵抗しなかったでしょうし、半島は赤化で統一されていたのだと思います。
それはそれで、半島を戦略的バッファーとしてきた日本にとって非常に大きな問題なのですけど、アメリカのスタンスはそのようなものだったということを知っておく必要があります。

半島の歴史からすると、二国ないし三国に分裂していた時代の方が長く、それぞれの国はどれだけ宗主国たる中国王朝に忠誠を示すかの競争で存亡が決まったものです。
大陸から2000回もの侵略を受けたとされる半島にあって、負ければ滅亡、勝っても朝貢を許されるだけという苛烈さがあったわけで、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや、云々」などという、恐れを知らない人たちには到底理解できないトラウマが民族の記憶に埋め込まれているのだと思います。
朝鮮の人たちからすれば、これが儒教で言う「礼」なんだ、物事の道理なんだ、という話で、「だから日本人は礼を知らない」とかいうことにもなります。
その中国が、共産党王朝として100年ぶりに隆盛してきた、忠誠を誓ってきたはずの北朝鮮とも疎遠になってきた、これは機会到来と韓国が感じたのも民族が抱えるトラウマのなせる所でしょう。
だが、中華帝国がアジアを支配していた近代以前ならまだしも、グローバル化が進んだこの現代にあって、対立している大国の間を上手く遊泳できるというのは半島の人の「理想」ではあれど、現実ではありません。
どちらに付くのか、日本以上に国際政治の厳しさをあまり経験してこなかった韓国にとって、この国は信頼するに足るのか足らないのか、アメリカと中国からそれぞれ試さることになります。
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2015年10月16日

ユネスコへの対応は冷静に

16日朝刊2面【総合1】社説2
 1937年の南京事件に関して中国側が提出した史料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が記憶遺産に登録した。信頼性に問題があるとして登録に反対していた日本政府では、菅義偉官房長官がユネスコへの資金面の貢献を見直す可能性を表明した。自民党は部会などで分担金の支払い停止を求める決議を採択した。
 ここは落ち着いた対応を求めたい。歴史問題をめぐる中国の動きには政治的、外交的な思惑がうかがえる。それを見極めないで短絡的な反応をすれば、かえって思うつぼとなりかねない。
 南京事件では30万人が日本軍によって殺害されたと中国は主張している。今回ユネスコが登録した史料もそうした主張を裏付ける内容となっている。
 これに対し日本国内では、当時の南京の人口などを踏まえて30万人というのは過大だとの指摘が多い。ただ、非戦闘員の殺害や女性への暴行など残虐行為があったことは日本政府も認めてきた。
 ユネスコには世界遺産、無形文化遺産、記憶遺産の3つの遺産事業があるが、ほかの2つと異なり、記憶遺産には関係国が意見を述べて議論する場がなく、専門家らによる非公開の検討などに委ねられている。こうした手続きは透明性を欠くと批判する日本政府の立場には一理あろう。
 制度に改善の余地があるなら、あるべき姿に変えていく努力は必要だ。だからといって、資金負担の見直しをちらつかせて主張を通そうとすれば、国際社会の理解を得ることはできないだろう。
 日本政府として南京事件そのものを否定しようとしているとの印象を世界に与え、結果として中国に歴史に絡めた宣伝の材料を提供することになるおそれもある。
 ユネスコの最大の資金分担国である米国は現在、パレスチナの加盟に反発して支払いを停止している。日本はそうしたやり方にならうのでなく、前向きな提案でユネスコの遺産事業の強化に力を注ぐべきではないか。


どうも日本では「国連信仰」のようなものがあって、何だか「国連」と付くと政治的に侵してはいけないものだという論調になりがちです。
これも戦後教育の賜物なのでしょう、しかしUnited Nationsという名のとおり第二次大戦の連合国が「国連」であり、実体は国際政治そのものなのですね。
安保理で常任理事国が拒否権を発動するのと同じように、国益と違うことが国連で行われていれば反対を表明する、これ当たり前の話なのです。
国際政治の場にあって、国益以上に国連を有難がるなんて倒錯した議論は聞いたこともありませんし、どの国だって広く国益のために国連加盟してるわけです。

今回の南京事件について言えば、これは明らかに中共政府による「歴史戦」です。
中国人というのは、長きに渡り「歴史」の意義と使い方を世界で一番よく分かっています。
いわゆる「正史」と呼ばれる『春秋』や『史書』など、膨大な「歴史書」と称するものを何故数千年間も遺してきたのか、それはそれぞれの王朝が自らの正統性を証明する唯一の手立てだからです。
例え共産党と言えども、過去の王朝に倣い「歴史」を作らねばならない、それが正統性を立証するからなんですね。
南京戦は、日本と国民党軍との戦いであり、当時の共産党は首都である南京城から敗走した国民党を批判してきました。
「南京事件」とは、人民を捨てて首都から敗走したという黒歴史を「大虐殺」に転嫁させようとした国民党の宣伝工作に過ぎず、実際、「事件」が事件化したのは東京裁判における国民党政府からの申し立てによってです。
ところが、中共政府が大陸全土を支配し、新王朝として確立し始めた頃から、朝日新聞はじめとする日本のメディアが盛んに北京へ過去の出来事を「ご注進」するに至り、「大虐殺」は価値ある「歴史」だとして彼らの「史書」に書き加えたわけです。

一方、「日中友好」を何よりも重んじたわが政府は、事件だ大虐殺だという騒ぎに暫く音無しの構えでしたが、小泉内閣の頃からでしょうか、このままでは大変なことになると、歴史教科書問題を契機に事実と事実でないことの峻別をしようします。
しかし中共にとっては、すでに「史書」に記録してしまったことです、歴史を書き換えろとは何様なんだ、というお話でしょう。
事実だとか証拠だとか、近代の常識や科学でもって正統性を証明する必要は一切なく、記録されたものが全てということです。
正史の原本は、皇帝に捧げられ王宮の奥深くに仕舞われますが、内容は木版印刷によって広く普く人々に読まれ、これが「歴史」ということになるのです。
ユネスコ登録も、歴史化という一つの作業だということを、もっと真剣に捉えた方がいい。
これに反対することは、前近代的な中共政治の専横を許さないと言うことであり、それに手を貸すユネスコへの批判となります。
過去には、米英が政治的偏向を理由としてユネスコから脱退したことすらあり、そんな危機の時に日本がユネスコへの資金提供と改革に大きな役割を果たしたのです。
国益剥き出しの国際政治において、「前向きな提案でユネスコの遺産事業の強化に力を注ぐべき」などという紳士の対応で、果たして「歴史戦」に勝てるのか、ということです。
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2015年10月15日

次の本命まだ見えず

15日朝刊3面【総合2】
 電池や制御ソフトといった電動化技術が世界の自動車業界で競争の焦点となってきた。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)で培った技術を燃料電池車(FCV)に応用する。ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れる独フォルクスワーゲン(VW)は、電気自動車(EV)に開発の軸足を移すことを表明した。いずれの技術も本格的な普及には課題がある。
 「FCVは二酸化炭素(CO2)を排出せず、走行距離も長い。水素の充填にかかる時間もガソリン車並みだ」。14日の記者会見でトヨタの伊勢清貴専務役員はFCVがエコカーの本命になるとの見通しを示した。自動車大手ではホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)などもFCVの販売を計画している。
 水素ステーションの整備が本格的な普及のハードルとなっている。設置には1カ所当たりガソリンスタンドの約5倍に当たる5億円程度がかかる。日本国内の開設は2016年3月期までに100カ所程度にとどまる見通し。EVを手掛ける米テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「インフラ整備は難しい」と指摘する。
 EVはテスラや日産自動車が重点投資する。中国メーカーも開発に熱心だ。VWはイメージが悪化したディーゼル車に代わってエコカー開発の主軸に据えた。小型EV向けの新たな車台(プラットホーム)を開発し、複数のブランドで共用する。最上級セダン「フェートン」の新モデルはEVにする計画だ。
 そのEVにも課題はある。日産は12月「リーフ」の新モデルを発売する。1回の充電で従来より約2割長い280キロメートルを走行できる。それでも航続距離はガソリン車などに及ばないのが実情だ。販売地域も環境規制が厳しい米カリフォルニア州などに偏っている。
 各社は電池の性能向上に力を入れ一定の成果を上げているが、トヨタ幹部は「充電時間を短縮する技術のメドは立っていない」と指摘する。
 エンジンは約1世紀にわたり自動車の動力源の主役を担ってきた。しかし各地で強まる環境規制を乗り越えるには限界もみえてきた。各社はそれぞれの課題を解決するスピードが問われている。


世界の自動車シェアの2割を占めるトヨタとGMというビッグ2が燃料電池を本命としている以上、FCVが本流となるのでしょう。
しかし、ご案内のように燃料電池に使用される水素は、車内の高圧ボンベに700気圧で充填されるわけで、そんな爆弾のような代物を背後に乗せてるというのも、あまり愉快な気はしません。
また、高圧ボンベの形状はどうしても円柱状が耐圧性として良いのですけど、現在のLPG車のように自動車へ搭載するにはあまり効率的な形状ではありません。
ガソリンのような液化燃料ならば、タンクの材質や形状は如何ようにでも変えられるわけで、このあたりも高圧ガスを使うデメリットになっています。

これは、水素を供給するステーションでも同じ問題があり、インフラ整備には政府の補助金政策が必要なのは間違いないでしょう。
ステーション側が悩ましいのは、当面はガソリン車にもFCV車にもEV車にも供給できる体制を作らねばならないのか、例え補助金があったとしてもそれだけの設備投資するだけ売上が見込めるのか、という経営上の問題です。
唯でさえ、ガソリン価格の低下や省エネ化による需要の低下など、経営困難で廃業するGSが多く、GS空白地域などと呼ばれている所もあります。
地方であるほど、公共交通の代替としてクルマ社会化しており、しかし燃料の供給すら覚束ないのでは、人が住むことすら出来なくなります。
環境だ、エコだ、新技術だと言ったところで、人間が不便になってしまったのでは一体何のための技術かということでしょう。

もともと、19世紀に自動車が発明された当初は、蒸気と電気と内燃の3つの機関が共存しており、結局、効率性から内燃機関が現在まで生き残ったという歴史があります。
従って、電気と言っても新しいお話ではなく、ガソリン車のメリットを超えられなかったので、今まで普及してこなかったというだけなのです。
石油が枯渇してしまい、もう人類が入手できないというならばまだしも、環境のためだけに不便を承知で多くの人がFCVやEVを買うのだろうか、これが問題の核心じゃないでしょうか。
あらゆる点でガソリンを超え、消費者がメリットを享受できない限り、こうした技術と言うのは普及しないと思うのです。
どれも「帯に短し襷に長し」だからこそ、本命が見えてこないのでしょうね。
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2015年10月14日

VW、エコカー戦略転換 ディーゼルから電気へ 排ガス不正受け投資削減

14日朝刊1面 フランクフルト=加藤貴行
 欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)はディーゼル車の排ガス不正問題を受け、環境対応車(エコカー)戦略を転換する。従来のディーゼル車偏重を見直し、電気自動車(EV)の開発へ軸足を移す。ディーゼル車のイメージ悪化に加え、業績悪化で投資の選別が避けられないためだ。EVで出遅れていたVWの戦略見直しは、技術開発や規模のメリットを狙った新たな戦略提携の呼び水となる可能性もあり、競合他社や部品メーカーにも影響を与えそうだ。
 VWは新たに小型EV専用の車台(プラットホーム)を開発。高級車ブランドのアウディや大衆車のシュコダなどグループ企業の間で、電池だけで250〜500キロメートル走行できる車種を対象に共有する見通しだ。モーターや蓄電池などの基幹部品も共通化し、開発・生産コストを抑制する。
 一方、基本的に家庭で充電し、走行中にエンジンを補助発電機として使うプラグインハイブリッド車(PHV)の開発にも重点的に取り組む。
 VWは2015〜19年に総額1076億ユーロ(約14兆5千億円)の投資を計画していた。ただ今回の不正対象車は世界で1100万台に上る。リコール(回収・無償修理)や規制当局による制裁金、消費者からの訴訟などによって業績の大幅な悪化が避けられない。このため乗用車部門の毎年の投資額を計画の5%弱に相当する10億ユーロ削減する方針も明らかにした。
 独紙ハンデルスブラットは13日、VWが部品メーカーへの原価低減要請で約30億ユーロのコストを削減する計画だと報じた。
 絞り込む研究開発などへの投資を、EVへと優先的に振り向ける。VWはエンジンをモーター・蓄電池が補助するハイブリッド車の開発でトヨタ自動車などに後れをとった。このため排ガス不正が発覚するまでは、燃費性能に優れたディーゼル車をエコカーの中心に据える一方、EVに徐々に移行する戦略を掲げ、13年ごろからPHVやEVの市販を開始していた。
 VWは主力小型車「ゴルフ」などにEVやPHV仕様を設定しているが、グループの販売全体に占める割合はまだ小さい。ただしアウディは1回の充電で500キロメートル走行できる多目的スポーツ車(SUV)を18年に発売する計画で、開発自体は進んでいる。
 VWは現在、世界販売の2割強をディーゼル車が占める。欧米向けのディーゼル車には、有機化合物の尿素を使う高機能な排ガス浄化装置を全面的に採用する。ただ不正に伴うイメージ悪化で当面の販売低迷は必至。欧米当局は排ガス試験の運用を厳しくする方針を打ち出しており、コストが上昇する可能性もある。
 欧州など主要市場で環境規制が厳しくなる中、ディーゼル車からEVへのシフトを鮮明にする。EVは高い販売価格が普及のハードルとなり各国政府の補助金に頼っている面が強い。


ここでディーゼルからEVに軸足を移すのは、フォルクスワーゲンにとって致命的な戦略ミスになりかねません。
そもそも論として、トヨタがハイブリッドで世界市場に打って出てきた時、VWには迎撃するだけのエコ技術を持ちあわせていなかった、仕方なく伝統技術でもって「クリーン・ディーゼル」とエコを謳い、しかしそれでシェアを取ろうと無理したがために今回のような問題となったわけです。
CO2とNOx、PMという化石燃料車の排出ガスにどう対応するのか、ディーゼルはCO2こそガソリンエンジンに較べて少ないと言われてますが、NOx、PMはフィルターなどで高度な処理するしかない、しかし大衆車を標榜するVWのような小型ディーゼルはパワーに余裕がなく、処理をすればするほど燃費が悪くなり、走りも悪くなるという原理的な課題を抱えています。
じゃあ、検査の時だけ処理をかけりゃいいじゃないか、燃費や走りはユーザーが気にすることであって、検査には関係ないということでソフトを組み込んだとされています。
欧州の検査機関だってディーゼルが抱える宿命を知ってるのですから、VWのソフトにはとっくに気がついていたと思いますし、「そうじゃないと売れないだろ」というのでお目こぼしをしていたのだと想像します。
ただ、緯度的、地形的にNOxが上空に滞留し易い北米西海岸の検査基準の厳しさがVWにとって鬼門だったわけで、とにかくエコを看板にしたディーゼルを売りまくってシェアの拡大と時間稼ぎしている間に、次世代のエコカーを開発・投入していこうという彼らの戦略は今回頓挫したと見るべきです。
じゃあ、イメージが悪いからとディーゼルを捨て去って、先行メーカーに勝てるEVだかPHVだかの技術力がVWで育っているのかと言えば、そうではないと思います。
先行メーカはこれまで市場に投入した多くの実績を更に研磨し、頂上を極めようとしている時に、VWのはまだ道半ばなのです。
逆に言えば、安価で良質なEV技術が確立していればディーゼルなんかに頼らずとも、そっちにシフトしていたし、今回のような問題も起こらなかったのです。
ここに来て、戦略を転換してEVを前倒し投入するというのは、経営的に非常に危険な選択です。
ドイツにとって、VWのプレゼンスは大きいものがあり、経営が立ち行かなくなっても政府が救済するでしょうが、それがドイツ凋落の象徴になるような気がしますね。
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2015年10月09日

ロシアが米欧に示威 シリアに巡航ミサイル発射 カスピ海から中東射程に

9日朝刊6面【国際1】モスクワ=古川英治
 ロシアがシリアでの軍事行動をエスカレートさせている。過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)掃討の名目で同国のアサド政権を支援するロシアは7日、カスピ海から1500キロ離れた標的に初めて巡航ミサイルを発射し、戦力を誇示した。米国はロシアとの軍事対決を望んでいないと踏んでおり、強硬策により、アサド政権の退陣を求める米欧や周辺国に圧力をかけている。
 ロシアメディアによると、同国軍が発射した巡航ミサイル「カリブル」はソ連時代のミサイルの改良を重ね、2012年にカスピ海小艦隊に配備された。射程は2600キロに及び、誤差3メートル以内の精度を誇るという。黒海艦隊にもすでに配備したもようだ。
 ロシアはミサイルの精密さで米欧に対する示威効果を狙ったと見られる。対イラク戦争などで巡航ミサイルを多用してきた米国のほかは、誘導ミサイルの精度を誇るのは英国軍などに限られるとされてきたが、ロシア軍の技術が上がっていることを示した。
 ロシア国防省はミサイルが上空を通過するイラン、イラクと事前に調整したとも発表した。カスピ海小艦隊が対中東で戦略的な役割を果たしうることも誇示した。
 ロシアは攻勢を強めている。英国を拠点とする人権団体は7日、ロシア軍の空爆と連携してアサド政権の地上部隊が反体制派に対する大規模な作戦を実施したとの見方を示した。レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラやイランの革命防衛隊がアサド政権側に加勢しているとの情報もあり、ロシア、イラン、アサド政権が連携しているとの見方が強まっている。
 オバマ米政権はロシアの攻撃の大半がISではなく、米軍が支援する穏健な反アサド勢力が標的になっているとの批判を繰り返すだけで、ロシアに対抗する動きはない。ウクライナへの軍事介入時と同様に、米軍は介入しないと見てプーチン政権は強硬策に拍車を掛けており、米国の「無力さ」を露呈することに注力しているように見える。


ロシアが、初めて巡航ミサイルを実戦投入した日となりました。
帝政ロシア時代からカスピ海に配備されているこの湖水艦隊の旗艦は、基準排水量1500トンクラスの小さな警備艦だそうで、この艦から射程2600キロ程度の巡航ミサイルを発射したと言うことです。
シリア内のISへの攻撃なら、黒海艦隊が地中海まで進出してミサイル発射すればとも思うのですが、ロシアはイラン、イラクの上空通過という「実績」を作りたかったのではないでしょうか。
プーチン大統領とすれば、ロシア単独の攻撃ではない、シリアからの要請を受け、周辺国も協力しているという「集団的自衛権」の建付けができたわけです。

アメリカがトルコからの協力を取り付けるまで1年も掛かってるのに対し、ロシアはIS攻撃を表明してから1週間程度でこうした体制を構築したことをオバマ大統領に当てつけてるとも見えます。
もちろん、ロシアが時間をかけて周到な準備をしてきたのは間違いありませんが、国際社会への見せ方としては「レッド・ラインを越えた」と高らかに宣言した割に中東情勢の状況悪化と混迷に喘いでいるオバマ大統領より遥かにスマートです。
アメリカに何らかの戦略や成算や準備があってのことでなく、「正義」だとかの脊髄反射的な反応をしているだけにしか思えませんし、一方ロシアはウクライナやクリミア、シリアの状況をどうやって国益に利するかという、柔道のように上手く相手の力を使っているのではないでしょうか。
こうやって比較すると、言霊信仰ではありませんが「俺が言えば、世界が動く」みたいな脇の甘いオバマ氏と、情勢を分析して着実な戦略を立てる冷静なプーチン氏との違いがよく分かります。

そもそも「穏健な反アサド勢力」というのも、かなり胡乱な勢力のようで、欧米が資金や武器、訓練など軍事支援をしてきても、一向に強くならないどころか、提供されたアセットがISやヌスラ戦線など「敵方」に横流ししているという話もあるぐらいで、ザルで水を汲むどころではないようです。
まるで、日本が中国大陸で割拠する軍閥や国民党を支援しては、事態が泥沼化していく様に似ています。
ロシアはアサド政権を支えるのに本気、アメリカは国内世論を恐れて半身の構え、ドイツ・フランスはロシアと事を構える気は更々ない、するとウクライナ・クリミアと同じようにロシアのプレゼンスがシリアだけでなくイラク、イランにまで波及するでしょう。
欧米が仕掛けた「アラブの春」が、漁夫の利ならぬロシアの国益となるのではないか、こんな情勢判断をしたいと思います。
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2015年10月05日

TPP大筋合意へ 甘利氏「準備整う」 医薬・乳製品歩み寄り 環太平洋に巨大経済圏

5日朝刊 アトランタ=坂口幸裕
 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する12カ国は4日午後(日本時間5日未明)、大筋合意に達する見通しだ。懸案だった医薬品や乳製品分野で米国やオーストラリアなど関係国の協議が決着する方向となった。甘利明経済財政・再生相が明らかにした。TPP交渉の大筋合意により域内の大半の関税が撤廃され、アジア太平洋地域に世界全体の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大な経済圏が生まれる。日本の経済成長力の底上げを通じ、日本企業の活動や国民の生活にも追い風になる。
 4日に現地で記者会見した甘利経財相は「医薬品・乳製品・自動車の原産地規制の残された課題について大きな前進があった」と説明。同日午後に「閣僚会合を開き、大筋合意を発表する共同記者会見を開く準備を整えている」と述べた。
 大筋合意ができれば12カ国は来年初めにも協定に署名する。各国の批准手続きを経てTPP協定が発効する見通しだ。
 TPPの主軸となる日米も4日中に2国間協議で合意する見通しだ。日本は米国産のコメを年7万トン受け入れる一方、日本製の自動車部品にかかる米国の関税(2.5%)は全品目の8割が即時撤廃される。
 12カ国の閣僚は9月30日から米アトランタに集まり、難航していた医薬品、自動車、乳製品の3分野を中心に協議してきた。このうち最難関の医薬品のデータ保護期間で米国とオーストラリアが4日朝にかけて徹夜の交渉を続け、実質8年とする案でほぼ折り合った。8年のうち、3年は新薬承認のための期間とすることができる選択制を導入する方向だ。
 乳製品についても、大幅な市場開放を求めていたニュージーランドと、難色を示していた米国が折り合ったもようだ。「ニュージーランドが米国などと調整を本格化し、大筋合意までに決着できる見通しになった」(甘利氏)という。
 一方、自動車の関税撤廃条件では部品の55%以上を域内で調達すれば、輸出の際にかかる関税をゼロとすることですでに一致している。


“「なんだこれは」。9月下旬、農林水産省内は騒然となった。首相官邸から届いた菅直人首相の所信表明演説の文案だ。各省の関連部分だけ「短冊」と呼ばれるA41枚紙でバラバラに提示するのが自民党政権時代からの慣例。そこにはこう書いてあった。「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉等への参加を目指す」
 首相周辺は「経済産業、外務両省のシナリオに仙谷由人官房長官が乗ったんだ」と解説する。貿易自由化戦略の遅れに焦りの色を濃くしていた経産省。事実上の日米自由貿易協定(FTA)ともなるTPPを対米外交のてこにしたい外務省。鳩山前政権から対米重視にカジを切った菅政権の誕生で、官僚らが動いた。(中略)仙谷長官らは6月に閣議決定した新成長戦略では、参院選への影響を理由にTPPへの言及を見送った経緯がある。だが、11月のAPECが迫りいつまでも先送りはできない。「日米で歩調を合わせればいい。好機を逃してはいけません」。仙谷長官の説得に首相も次第に意を強くしていった。”

これは、2010年11月10日付の特集記事からですが、「県外・国外」の食言などで失脚した鳩山由紀夫内閣を継いだ菅直人内閣から、民主党政権はTPP参加を突然表明し始めます。
「聖域なき関税撤廃」やら「バスに乗り遅れるな」と言った言説が、当時の政権やメディアから喧伝されてきたTPPでしたが、結局のところ、「聖域」はあったし、バスも日本をずっと待っていたのでした。
交渉事である以上、各国とも「聖域」を獲得するために交渉するし、アメリカ対小国という矮小な体制にしないためにも日本の参加を待っていたのです。
メディアとしては、そんなのは当然であるが、甘言を弄していたのでは国民も本気にならないからと思っていたのでしょう。
「聖域なき関税撤廃」とか「バスに乗り遅れるな」とか真に受けるほうがどうかしている、というのなら、それは民主主義から遠く離れたエリート主義だと言わざるを得ません。
これは「戦争法案」などと呼ばれた安全保障法制も同じことでして、真理や核心、本質は隠しておいて、表面的なスローガンを並べては「反対」あるいは「よく分からない」、「急ぐ必要はない」という世論を形成していくのですね。
私たちとすれば、メディアの価値判断や世論操作に何ら興味はなく、ファクトをファクトとして知りたい、ただそれだけなんです。
最近では、「知らなかった」とか「分からない」という「国民の声」なるものをメディアも平然と流し、「政府はもっと丁寧な説明をする必要がある」とか上から目線で語りますけど、その「声」が事実であるという前提に立ったとしても、ファクトを伝えていないマスメディアこそ責任を問われているんじゃないですかね。
そもそも、「知らない」「分からない」というのは自分の無知を世間に披露することであり、素直と言えば素直ですが人として相当恥ずかしい告白です。
自分は何も情報収集してません、勉強してません、ということですから、自慢できるお話じゃありませんよ。
政府が隠し事をしていれば別ですが、ネットで調べれば公知の事実なのですから、あとは情報源たるメディアが報じていなかったということに他なりません。
「知らない」「分からない」という「声」を拾っては、これは政府の責任だと転嫁することに精を出すより、自分たちが仕事をサボっていることに羞恥心を持ってもらいたいのです。

TPPに話を戻すと、ルールはこれで出来たという段階に過ぎず、これを日本の国益にどう資するかという具体的な政策に落し込む作業が待っています。
通商交渉で耳目を集めるのは常に、「安い産品が輸入されて、国内の生産者が大変だ」という部分だけですが、相手国だってそれは同じなんです。
だから、国内産業保護のための関税や補助金、あるいはセーフガードという措置が認められているわけで、ここを抜きして「大変だ、大変だ」では本質を語っていないことになります。
生産者の保護と消費者の利益のバランスをどう取っていくのか、これが輸入に関わる政策であり、一方輸出では攻めの政策が必要になってきます。
TPPでは医療、サービス、知的財産や投資部門の敷居を低くするのが一つのポイントとなっています。
所謂、アベノミクスの成長戦略はTPPを前提としており、本当の勝負はここからだと思うのです。
posted by 泥酔論説委員 at 09:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする