2015年10月31日

辺野古移設、反対だけでは意味がない 仲井真前沖縄知事に聞く 基地の危険除去進めるべき

31日朝刊2面【総合1】真相深層
 沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題で、政府と沖縄県の対立が深刻さを増している。2013年末に埋め立てを承認した仲井真弘多前知事が、日本経済新聞のインタビューで、かつて行動を共にした翁長雄志知事や本土への思いを語った。
行政の責任放棄
 ――政府は埋め立て工事に踏み切った。
 「尖閣諸島など安全保障環境を考えれば、前に進めないといけない。安全保障の問題を最終的に決めるのは政府だ。安倍晋三首相や菅義偉官房長官のような能力のある人がそろっている時じゃないとなかなか進まない」
 ――代執行など政府のやり方は強引だとの批判がある。
 「政府は20年間抱えている懸案だ。普天間基地の危険を取り除くために必要なことはやるべきでないか。現実的なものに手をつけず、反対だと言い続けるのはナンセンス。激しい議論は当然だが、政治家ならずっと平行線では意味がない」
 ――翁長氏は一歩も引かない。
 「ただ反対するのは市民運動ですよ。知事が市民運動のリーダーシップをとるのは行政の責任を放棄したのと同じ。政府とどこかで折り合うつもりがあるなら別だが、ないとすればどこまでいっても何のプラスもない」
 ――仲井真さんも10年知事選では普天間基地の県外移設を訴えていた。
 「県民からみて最も望ましいのは県外移設だ。私もずっと追求してきた。しかし実現性が高く、最も早く普天間基地の危険性を除けるのはやはり辺野古だ。米軍が絡む事件・事故を限りなくゼロにする。日米地位協定を変えていく。こういうことをしっかりやってもらえば、県内も落ち着いてくると思う」
 「沖縄が過重負担なのは確かだ。演習場や海・空の制限区域が多く、植民地とまでは言わないが、文字通り外国があると言っていい。基本的な感覚は革新も保守も僕も9割は一緒。ただ最後の結論がね」
 ――翁長氏はいつから考えが変わったのか。
 「聞いてみてくださいよ。(翁長氏がかつて当選した)那覇市長選は頑張って応援した。それを裏切って向こうに行った。政敵とは言わないけど、考え方が違う」
人権問題でない
 ――翁長氏が知事になって1年近くになる。この間、話をしたか。
 「僕はずっと黙ってみていた。話をしたことはないですよ」
 ――翁長氏が翻意することは。
 「移設反対が選挙に有利なのは決まっている。それだけだ」
 ――翁長氏は国連で「基地問題は人権問題だ」と訴えた。
 「基地問題は安全保障問題だ。差別や人権と結びつけるのはおかしい。沖縄を誇りに思う人がいるのに、自らおとしめているのではないか」
 ――沖縄独立論も出ている。
 「昔からある『酒のみ論』ですよ。現実の話だと誰も思っていない。沖縄には昔からいっぱい人が来て、最近も海外の観光客で成り立っている。排他的なアイデンティティー論はだめで、オープンにしていかないと」
 ――心情的に中国に近づくことは。
 「重心が米国か中国かは日本にずっとある話だ。欧州だって中国に寄って来ている。沖縄の人は用心深いからね。中国とつきあって政治的に何かを得ようとするには慎重さがいる」
 ――南シナ海で起こっていることが東シナ海で起こったら。
 「そんなことが起これば沖縄はどうにもならない。政府にお任せし、我々は慎重にお付き合いするに尽きる」


「移設反対が選挙に有利なのは決まっている。それだけだ」、これは辺野古移設の埋め立て許可を出した直後の沖縄知事選で、移設反対を唱えた翁長雄志氏に敗れてしまった仲井真氏の悔しさからでしょう。
しかし、仲井真氏が知事であった8年間は一体何だったのか。
反対運動の県民大会に出席したり、容認するかと思えば実現が難しい滑走路の沖合設置を言い出したりと、日米で合意した2014年移転完了が大幅に超えているのは、この御仁の責任でもあるのです。
ルーピー氏の「国外、県外」の食言事件も、仲井真氏がグズグズしていることに託けたものであり、「実現性が高く、最も早く普天間基地の危険性を除けるのはやはり辺野古だ」などと言えたものでしょうかね。
「沖縄人は強請、タカリばかり」などという誹謗も酷すぎますが、政府と条件交渉して何かを得ようという以上の執拗さと言うか、木を見て森を見ない所があるようにも感じるのです。
いや、基地負担で大変ではあるが、沖縄は日本の外交・安全保障にとって最重要の地域であり、沖縄県民はそれにしっかりと対応していると誰もが思えば、じゃあウチでも負担を分けあいましょう、支援しましょう、となるわけです。
「俺達はずっと被害者だ、カネ寄越せ」みたいな具合に見られてしまっては、沖縄にとって大きな損失でしょう。
「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」、と沖縄から最期に打電した大田実海軍中将も、今の状況をみてどう感じるのでしょうか。

結局、国は辺野古移設を完遂します。
翁長知事も埋立差し止めを司法まで持っていくでしょうが、外交・安全保障は国の専権事項であり、裁判所もこれを認めます。
そして、普天間ほか米軍基地や制限地区も返還されて、日米合意は果たされることになります。
この頃まで翁長氏が知事であるのかどうかは知りませんが、少なくとも移転が始まれば跡地利用のため国からの支援も貰うのでしょう、その時「実現性が高く、最も早く普天間基地の危険性を除けるのはやはり辺野古だった」と平然と受け取るのでしょうか。
よく分かりませんね。


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2015年10月30日

旭化成建材、データ改ざん4カ所に 新たに釧路・横浜 国交省、調査拡大を検討

30日朝刊2面【総合1】
 旭化成子会社の旭化成建材(東京・千代田)が杭(くい)打ち工事をした北海道釧路市の道営住宅2カ所と横浜市の中学校でデータ改ざんが見つかり、改ざんは横浜市の傾いたマンションと合わせ計4カ所となった。同社は29日、新たなデータ改ざんの事実を認めた。問題が個人の不正にとどまらないことが判明し、国土交通省は調査対象を同社以外にも広げる検討に入った。
●また流用判明
 北海道庁は29日、釧路市で旭化成建材が杭打ち工事をした道営住宅で、データ流用が見つかったと発表した。28日にも同市内の道営住宅でデータ流用が見つかっており、同じ現場責任者が杭打ち工事を担当していた。
 新たにデータ流用が分かった建物は鉄筋コンクリート8階建て。道の調査によると、杭22本を打った際の電流計の記録のうち2本のデータが同一で不自然だった。旭化成建材は「同一データを使っていると認めざるをえない」と話したという。この住宅には現在39世帯が入居している。
 横浜市は29日、旭化成建材が杭打ちをした市内の公共施設で、210本の杭のうち15本の先端を覆うセメント量について、データ流用が確認されたと発表した。施工担当者は市内の傾いたマンションとは別人だった。
 施設は中学校で、市内の元請け業者がデータを照会したところ、セメント量などがまったく同じ杭が見つかった。旭化成建材はデータ流用を認めたという。一部は流用だけでなく別のデータを挿入して加工されていた。現時点で傾きやひび割れなどは起きていない。
●数十件で疑い
 旭化成建材が杭打ちをした建物のうち、データ改ざんが疑われるのは全国で少なくとも数十件に上る。旭化成は傾いたマンションと同じ工法で杭打ちをした全国3040件の調査状況を30日に公表する。
 旭化成建材の前田富弘社長は29日、傾いたマンションの杭打ち担当者が携わった41物件のうち、23件が集中している愛知県の大村秀章知事と名古屋市で会い「県民の皆様に心配、迷惑をかけている。おわび申し上げる」と陳謝した。大村知事は「愛知県での調査を最優先し、安全性の確認をしてほしい」と要請した。
 複数の施工担当者によるデータ改ざんが明るみに出たことで、より多くの物件で改ざんが行われていた疑いが浮上してきた。改ざんが旭化成建材1社にとどまらない可能性も指摘されている。
 国交省は旭化成建材以外の業者にも調査対象を広げる検討に入った。来週初会合を開く有識者委員会の議論などを踏まえ、慎重に判断する。同省によると杭打ち工事会社は全国に数百社あり、各社に自主的な調査を求め、報告させる方向だ。


しばしば報道が犯すのは、本質から外れた話をフレームアップして、どんどん関係ない方向へと世論を誘導することです。
世間の関心がそちらに向くだけなら別にいいのですけど、その先に待っているのは役所の規制を強めよという「要求」であり、それによって役所の権益が拡大していくことです。
規制強化とは、大きな政府論であり、「検査機関」とか「審査機関」という名の天下り先の拡充に他なりませんが、片方では小さな政府とか、天下り先の撲滅とか片方で論じているのですから、一体どっちやねんとツッコみたくもなります。
という訳で、報道をただ追って「ふんふん、なるほど。こりゃケシカラン」と怒ったり嘆いたりするのでは、メディアに乗せられているだけに過ぎないのです。
私たちが常に心がけたいには、「この問題の本質は何なのか」という視点です。

今回は、マンションの基礎施工において杭が支持層にまで到達しておらず、基礎杭の自然沈降による建物の傾きがあったということです。
現場の作業管理者および作業者は「達していた」という認識だったそうですが、実際には達しておらず、それを証明するデータにも「改ざん」があったと。
ここで本質なのは、データの「改ざん」にあるのではなく、杭打ちの作業そのものにあるはずです。
施工した旭化成建材の資料(http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2015/pdf/151020.pdf)では、未到達の要因として次の2点を挙げています。
(1) 支持層への到達を確認しないまま作業を終了
(2) 急しゅんな傾斜の支持層であったため支持層に到達したと誤認
1については、故意なのか未必の故意なのかはこれからの話ですが、いずれにせよ決められた作業手順から外れた違反行為であるのは間違いありません。
さらにデータを「改ざん」していたのなら、自分の行為を隠蔽するためのものであるかもしれず、これは悪質だと思います。
最近も会社への怨恨から、自分が点検したエレベーターで、意図的に不具合が発生するよう仕掛けた作業員が逮捕されましたが、これと同種の話となります。
一方、2については、管理者も作業者も「到達した」と確信したが、実際は未達であったという状況で、逆にこのケースではデータが作業の正当性を証明することになり、わざわざ「改ざん」する必要はないということです。
では、なぜ他のデータを流用したりしたのか、言われていることは当時の測定器からのデータ出力が記録紙だけであり、これが現場で紙詰まりや操作の不手際などにより欠測してしまったので、やむなく他のをコピーして貼り付けたり、加筆したりしたのだとされています。
その時しか取れない観測データというのは、今の時代にあっても欠測はありますが、一般的には、こうした事情で欠測したと空白にするものです。
所が、それだと元請けが作業記録を受け付けないので、やむを得ず作文したという話も伝わっています。
しかし、データは杭打ち作業の客観記録であって、支持層への到達、未到達、あるは根固めのセメントミルク量については、現場において作業者の確認が第一義なのです。
それが出来ていなかったのなら、作業者のミスであり、施工会社の管理ミスであるわけです。
本質なのは、データの「改ざん」にあるのではなく、杭打ちの作業そのものだというのは、こう言う意味なのですけど、現場でのやむを得ない作文でもって、この建物も欠陥だ、あの建物も欠陥だと言い募ることが果たして社会的に有意義なのかなと思います。
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2015年10月28日

米艦、12カイリ内哨戒継続 南シナ海人工島 中国艦は警告

28日朝刊1面 ワシントン=吉野直也、北京=永井央紀
 米海軍は中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロ)内の海域での哨戒活動を当面、継続する方針だ。人工島を造成して海洋権益を拡大しようとする中国を抑止する。中国外務省は27日「必要に応じてあらゆる措置を取る」と譲歩しない姿勢を示した。南シナ海をめぐる米中の対立は長期化の様相をみせている。
 中国国防省の楊宇軍報道官は27日夜の談話で、南シナ海の人工島周辺を航行した米艦船に中国海軍のミサイル駆逐艦「蘭州」と巡視艦「台州」が警告活動にあたったと明らかにした。米艦船を追尾したとみられる。
 カーター米国防長官は27日の上院軍事委員会で、今後数週間から数カ月間にわたって南シナ海での海軍の作戦を続けると明言した。米国防総省当局者は日本経済新聞の取材に「海洋権益を過度に主張する国には対抗する」とし、中国の脅しに屈しない姿勢を示した。
 今後の哨戒活動は27日に南沙(英語名スプラトリー)諸島のスービ(中国名・渚碧)礁、ミスチーフ(同・美済)礁で航行した米海軍横須賀基地に配備する駆逐艦などが中心になる見込みだ。駆逐艦にはP8など米対潜哨戒機を同行させ、中国軍の動向を監視する。中国外務省の陸慷報道局長は27日の記者会見で「米艦の行為は地域の平和と安定を損ねる」と批判した。


ワシントンで、習近平主席とオバマ大統領が会談したのは僅か1ヶ月前です。
この時の泥酔日記は、「中国に対しては、関与政策(エンゲージメント)がアメリカの外交・安全保障策でしたが、あまり関与したくないという大統領と、関与を拒絶する主席である以上、何の進展も見られないのは当然でしょう。しかしこれでは、中国の膨張をアメリカが黙認するということになり、日本にとっても脅威が増すだけなのです」と記しています。
やはり、習・オバマ会談は上手くいっておらず、後日の報道では会談後、南沙諸島への艦艇派遣をペンタンゴンが進言したところ、それまで消極的だった大統領からゴーサインを貰ったとされています。
世の中には、言葉で説得するリーガルマインドが通用する相手と、パワーを見せなければならない相手とがあり、中共は後者だと大統領もようやく気がついたのでしょう。
そして、アメリカは介入してこないと踏んでいた習政権は、計算違いをしたことになります。
もう一つ、先日同じくワシントンで行われた朴槿恵大統領とオバマ大統領との会談において、南沙諸島での中国の行動に韓国もアメリカと同じ声を上げて欲しいというのに対し、朴氏が答えなかったのも、この人たちにリーガルマインドは通じないとオバマ氏は感得したのだと思います。

「必要に応じてあらゆる措置を取る」、中共当局の常套句ですけど、今から2年前に彼らが「防空識別圏」と称するエリアを設定した際、米軍はグアムのアンダーセン空軍基地から2機のB52を飛ばし、「防空識別圏」なる空域を飛行してきたと発表。
中共軍は米側からの発表があるまで、まったく「侵入」に気がついておらず、当然スクランブルもなく平穏な飛行でした。
その時も、「必要に応じてあらゆる措置を取る」と言ってましたね。
今回は、B52と違ってイージス艦派遣の情報が事前にリークされていたわけですけど、また米側の発表があって初めて中国側も「侵入」に気がついたようです。
従って、中国艦艇が「警告活動」したと主張しているのも、一体何であるのかがよく分かりません。
当然、米イージス艦の上空には対潜哨戒機ばかりでなく、早期空中警戒機や電子偵察機なども待機させていますし、近海には機動部隊を遊弋させているでしょう。
それに対し、中共軍は人工島にあるレーダで監視していたはずですが、まだ十分に機能してないのではないかと思われます。
こうした能力を見るのが、もう一つの狙いです。
いずれにせよ、アメリカの行動が始まったことにより、南シナ海だけでなく東シナ海でも中共に対しての抑圧が効いてくることになります。
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2015年10月27日

シリア内戦巡り ロシアが「和平案」 米などに提示、外交攻勢

27日朝刊7面【国際】モスクワ=田中孝幸
 シリアに空爆を続けるロシアのプーチン政権がシリア内戦の収拾に向けて外交攻勢も強めている。和平協議の主導権を握ってシリアでの権益を確保するほか、軍事介入の長期化を避ける思惑があり、23日には米国などに独自の「和平案」を提示した。アサド政権の退陣を求める米国との立場の隔たりはなお大きく、4年半に及ぶ戦闘が終息に向かうか予断を許さない。
 複数のアラビア語メディアによると、和平案はロシアのラブロフ外相が23日の米、トルコ、サウジアラビアとの4カ国外相会談で示した。具体的には来年1月までに反政府勢力「自由シリア軍」(FSA)と政府軍の戦闘を停止し、議会選を経て暫定政権を樹立。1年半の移行期間後に新憲法下で大統領選を実施するという道筋を描く。
 「和平案」は「シリアの将来はシリア国民が決めるべきだ」(ラブロフ氏)との立場から、アサド氏の将来の大統領選出馬の可能性を否定していない。ただ、ロシアのプーチン大統領は「ロシア軍基地などシリアでの権益が守られるならアサド政権の延命に固執しない」(ロシア国防省筋)とされる。アサド氏が加わらない形の暫定政権の発足で関係国が歩み寄る余地は残した格好だ。
 ケリー米国務長官は23日の会談後、4カ国外相による協議が30日にも再開するとの見通しを示した。24日からは連日、ラブロフ氏と電話し、ロシアの和平案を含めた内戦の解決策について話し合った。サウジのジュベイル外相は25日、4カ国協議について「幾分、進展があった」と語った。
 とはいえ、米オバマ政権が抱くロシアへの不信感は根強く、議会選も公正に実施できるか危ぶむ声も少なくない。ケリー氏は24日、サウジの首都リヤドを訪れアサド政権と敵対するサルマン国王と会談。外交による解決を模索しつつも穏健派の反政府勢力への支援を強化することで一致した。
 ロシアとしてはオバマ政権が今回の案を丸のみする可能性が低いのは見越したうえで、「たたき台」の位置付けで協議に一石を投じ、米などの出方を探る意向のようだ。
 米ロが事態収拾を急いでも、シリア国内で激戦を続けるアサド政権と反政府勢力が和平に応じるか不透明な要素も残る。プーチン氏は22日、アサド氏が対話に前向きになったとの見方を示したが、国営シリア・アラブ通信によると同氏は25日、反政府派との対話に先立ち「テロリストの根絶」が必要と強調。FSAを含めた反政府派への攻勢を強める決意を表明した。
 ラブロフ氏は24日、FSAにアサド政権との対話を始めるよう求めた。米ロの共通の敵である過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う場合、空軍による支援を与える用意があるとも語った。ただ、FSAの報道官は26日、英国放送協会(BBC)のインタビューで「ロシアの支援はいらない」と明言。FSAに対する空爆の即時停止を求めた。


シリアにおいても、ロシアが主導権を握ったということになります。
それは、アメリカが外交的にも弱体化している証左であり、後からやってきたロシアが和平プロセスを提案するという事態を招いているのです。
おそらく、ウクライナと同じようにプーチン大統領のペースで進むのでしょう、そうなれば当然、ロシアに有利な形で和平交渉が行われることになります。
オバマ大統領は一体何のために、「レッド・ラインを越えた」とか宣言したのか、よく分からないままシリア情勢は新たな局面に入っています。
そして、シリアからイラクへとロシアの影響力は広がるのだと思います。

アメリカは対IS作戦として、米軍の人的損害が少ない空爆やドローンによる攻撃を中心としてきたとされていましたが、10月22日にイラク・ハウィジャ近郊で行われた人質救出作戦で米デルタ・フォースの隊員が戦死したことにより、実際は「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」であることも明らかになりました。
彼らは所謂「軍事顧問団」という肩書ですけど、単なるアドバイスや訓練教官だけでなく、実戦に従事していたわけであり、オバマ大統領の言ってることとやってることの矛盾が問題となっています。
ここから先は想像ですが、特殊部隊員の戦死は長く伏せておける話だったのに、いま明らかにしたのは軍の意向ではないかと思うのです。
しかも、彼の戦死を契機に作戦の状況映像をメディアで放映させると、やはり米軍が作戦に深く関わっていることが誰にも分かります。
大統領の言うとおりの空爆だけではISを壊滅できない、だから軍は地上戦にコミットしているのだというアピールではないか。
アメリカ人はこれをどう思うか、もちろん大統領は面目を失いますが、軍の行動は当然ではないかと支持すると思います。
ただ一方で、かつてのベトナム戦争でもフランス軍が北ベトナム軍に破れた後、南ベトナムの共産化を恐れたアメリカが「軍事顧問団」を派遣し、それが直接介入に繋がっていった記憶もまだ米国内に残っています。
対ISにおいても、アメリカがどこまで介入するかの線引は難しく、だが深い所まで入り込んでいるというのが実態でしょう。
そして,やはり同じく空爆や軍事支援だけと言ってきたロシアにとって、アメリカの「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」は更なる介入の口実ともなります。
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2015年10月26日

「難民危機」と欧州経済

26日朝刊16面【景気指標】ブリュッセル=森本学
 「難民危機」に揺れる欧州には今年、ドイツだけでも年間150万人もの難民が押し寄せるとの推計が出てきた。2014年の同国の難民申請件数(約20万人)の7倍強に当たり、日本で言えば神戸市や福岡市などの人口に匹敵する。しかし弱々しい回復が続く欧州景気に大きな打撃を与えるかというと、有力エコノミストたちの見方は違うようだ。「ユーロ圏の15年下期の実質国内総生産(GDP)を0.2%押し上げる」。独ベレンベルク銀行でチーフエコノミストを務めるホルガー・シュミーディング氏は景気へのプラス効果を強調する。短期的には財政刺激の効果をもたらすからだ。
 17日、独西部ケルンで衝撃的な事件があった。市長選挙の投票を翌日に控えた同日、有力候補が独国籍の男に襲撃され、大けがを負った。独メディアによると男は捜査に対して「外国人が仕事を奪う」と、独政府の寛容な難民受け入れ策を批判している。難民や移民に雇用を奪われる――。排外主義の根拠になりがちな典型的な発想だが実際はどうか。ベルギーを拠点とする大手シンクタンクのブリューゲルはブログで「既存の研究文献を再点検したら、移民の影響は小さいか存在しないとの結論がほとんどだった」という事例を紹介。むしろ移民らが社会に溶け込んで高齢者や子どものケアに携われば、働く女性の後押しになる、との分析もあるという。
 もちろん経済だけで語れないのが難民問題だ。流入を制御できない現状が続いて混乱に陥れば社会不安を高める。難民に認定されても定住先の国に溶け込めなければ、就労はままならない。難民危機を欧州の潜在成長力を高める好機に転じられるのか、それとも景気のリスクになってしまうのか。
 経済協力開発機構(OECD)は「難民をうまく社会に統合できるか次第だ」と答える。9月にまとめたリポートで、語学の習得や就学の支援、難民の雇用拡大に向けた雇用主との協力などを求めた。難民問題を新たな「経済危機」に転じさせないカギは欧州各国の政治の手にまだ残されている。


「難民」なのか、「移民」なのか、これが問題だと思うのです。
1951年の「難民の地位に関する条約」では、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々が「難民」だと定義されています。
要するに、自国内の迫害から逃げる人を「難民」と呼び、一方で自由意思に基づき平和的に生活の場を外国に移し定住する人のことを「移民」と呼ぶようです。
「難民」の場合、あくまでも緊急避難的な一時移住であり、自国が平和を取り戻せば帰国するのだという理解です。
ところが、いま欧州で起こっている「難民問題」とは、中東やアフリカから生活の場を欧州に移し定住する人を指していると言っても間違いないでしょう。
帰国するつもりがあれば、隣国に避難するのが常なのに、遠くドイツや北欧にまで「難民」となるのは、明らかにそこで定住しようという事に他なりません。
従って、この問題を「移民問題」だと捉えたほうが、正確に事態を説明できると思います。
しかし、なぜ「移民問題」だと言わないのか、「移民」となれば厳格な審査と制限が課せられるわけで、到底何十万人、何百万人もの人を受け容れられません。
そこで、彼らは「難民」なんだという建前にして、人道上の観点から受け容れのハードルを下げているのだと思います。
そこまでドイツなどが妥協しているのは、ナチス・ドイツ時代のユダヤ人迫害の反省からだけでなく、「移民」を産み出した元凶である「アラブの春」を欧州が主導したという自責の念からではないか、そう考えるのです。

「定住するつもりで、ここまで来た」という移住者たちと、「一時的な避難だから、早く帰国してね」という欧州政府側、この矛盾が早晩顕在化してきましょう。
地域コミュニティも職場も、いつまでも移住者たちに居られては迷惑だ、あるいはコミュニティ自体が移住者で占められてしまう、特にドイツ以外の国は失業率もまだ高く、仕事の奪い合いになっていくのでしょう。
反面、かつての植民地アルジェリアからの移民を多数受け容れたフランスのように、生産年齢人口と出生率が高まり、経済を牽引しているというのも事実です。
だが、そのフランスでも社会とイスラムとの折り合いをつけるのに相当苦労しており、また治安悪化も問題となっています。
極右政党とされる国民戦線が台頭してきているのは、フランス国内におけるイスラムとの対立が背景にあるのです。
我が国でも「難民」はともかくとして、「移民」については少子高齢化対策として検討する必要はありますが、プラス面とマイナス面は必ず存在します。
そして、政治的、社会的、経済的にも解決はそう簡単な話でありませんし、今般の「移民問題」も長い将来にわたり欧州に大きな影響を与え続けることは間違いありません。
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2015年10月25日

維新、本家争い長期化も 大阪系「臨時党大会」で「解党」を決議 松野代表「無効だ」

25日朝刊2面【総合・政治】
 維新の党が除籍(除名)処分した馬場伸幸衆院議員ら橋下徹大阪市長に近い大阪系議員は24日、大阪市内で「臨時党大会」を開き、新党結成に向け、維新の「解党」と政党交付金の国庫返納を決議した。松野頼久代表は同日夜、「到底認められず無効だ。代表が私であることに変わりはない」と批判した。双方とも法的手段に訴える構えで、維新の「本家争い」は長期化しそうだ。
 臨時党大会では松野氏に代わる代表として、馬場氏を選出した。馬場氏は大会終了後、総務省に「解散届」を提出する意向を表明した。時期については「1週間では無理だ。決まっていない」と述べるにとどめた。
 橋下氏は大会後、ツイッターで「議決権を有する特別党員が集まる党大会での過半数の決定が全てだ」と主張した。大阪系議員のほか、下地幹郎衆院議員ら国会議員20人が参加。大半が橋下氏が31日にも発足させる新党「おおさか維新の会」に加わる見通しだ。
 一方、松野氏ら執行部は臨時党大会に参加した議員の処分などを検討しており、26日に開く党紀委員会で対応策を探る。大阪系が解散届を提出した場合、異議を申し立てる構え。24日夜には高市早苗総務相宛てに解散届を受理しないよう申し入れた。
 延期していた代表選は11月末に実施する意向だが、党員名簿などを管理している大阪系は応じていない。今井雅人幹事長は「法的措置を含めて考えたい」としており、橋下氏も「互いにどんどん刑事告訴すればいい」とけん制している。
 政党交付金の交付や政党の解党を決める総務省は「双方の主張を聞く。解党届を受理するか判断はできない」(幹部)と説明。対立が長期化した場合、維新の来年分の交付金が出ない可能性もある。


「ウチが本家だ」、「いや、ウチが元祖だ」、世間ではよくあるお話です。
結局は権力闘争なわけで、国民には関係のない内輪もめで別れるの、別れないのと争っているわけです。
しかし、他人の離婚騒動ならまだしも、事は国政政党なのですから、私たちに関係ないで済ましておくわけにもいかないでしょう。
橋下氏が創立した「大阪維新の会」を母体に、自民党、民主党、みんなの党を離脱した議員が加わり国政政党「日本維新の会」が発足、そこに石原慎太郎氏ら太陽の党などが参入、その後、渡辺喜美氏の失脚に伴いみんなの党が分裂してできた江田憲司氏率いる結いの党と合流し、「維新の党」と衣替えしたわけです。
こうやって簡単に流れを説明しただけでも、相当の合従連衡と分裂を繰り返してきてますが、そもそも「大阪維新の会」自体も自民党などの大阪府議、大阪市議が核となっていたのですから、最初から既存政党の離脱者を寄せ集めた「新党」だったのです。
ここが、この党の悲しいところで、いろいろな出自や考え、イデオロギーを持つ人達が集まったのは、橋下氏という「カリスマ」に期待してのことで、その橋下氏が抜けてしまえばただの烏合の衆だったというのが今回の背景にあります。
このあたりは、民主党の出来方とも違っており、個人商店と揶揄されたみんなの党と近いのかなと感じます。

行き詰まりをみせてきた橋下商店の創業者が突然、経営から降りてしまい、残った番頭さんたちが東京と大阪で別れようと話をしていた、東京店はスーパー岡田出身者だったので、できれば店を解散させスーパー岡田に再就職したい、大阪店は創業の地に戻って地域店として頑張りたい、店の資産は東京と大阪で頭割りで分けようとしていた最中、大番頭が出てきて話をぶち壊した。
東京の番頭は役員会をひらき、大阪店店員は全員解雇、資産も1銭たりとも渡さないとしてきたので、大阪は創業者の入れ知恵で、東京の番頭は偽物だ、身分を詐称している、俺らを解雇する権限もない、橋下商店は解散すると店員の過半数以上を集めて決議。
対する東京も、あっちこそ偽物だ、店員総会は不成立だし決議も無効だ、今のところこんな所でしょう。
ご案内のとおり、政党は憲法で保証されている結社の自由の観点から、企業などと比べ規制法が少なく、党規約が法的判断の際に大きなファクターを占めています。
規約は自分たちで勝手に決めてますので、公序良俗さえ侵さなければ、都合のいいように作られるもので、維新の規約も橋下氏が作ったのか、内容がかなりスカスカです。
どっちでも取れるような穴だらけの規定なので、今回も東京と大阪で自分たちに都合のいい解釈を繰り広げてるだけであり、法的に云々なんてレベルの話ではありません。
従って「解散だ」、「いや、違法だ」と言って、判断を求め駆け込まれる総務省や裁判所もエライ迷惑でしょう。
ただ、橋下氏もこうした事態を予測してか、こちらに大義ありという世論への訴えを重視し、昨日の「臨時党大会」も「ちゃんと手続きを踏んでますよ」という演出にポイントを置いていました。
役所や司法の判断なんてのは世論次第だ、と見切っているからこそ、少々アクロバティックな論法でもって「臨時党大会」を実施したのだと思います。
こうした「ギャラリーにみせる」喧嘩なら、橋下氏の方が江田氏や松野氏より何枚も上手ですし、何をやってくるか分からない相手にリーガルマインドだけで対応しようとした東京側は重大なミスを犯したことになります。
世論がどう動くのか、これが維新騒動の勝敗を決すると考えています。
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2015年10月24日

韓国で反発広がる 中谷防衛相発言 「韓国の同意なく北朝鮮で活動可能」

24日朝刊6面【国際1】ソウル=峯岸博
 朝鮮半島有事の際には北朝鮮では韓国の同意がなくても自衛隊が活動しうる――。日本の中谷元・防衛相がこう発言したことに韓国内で強い反発が広がっている。韓国は北朝鮮地域も憲法で韓国領と規定しているためだ。韓国の野党は、発言を伏せていた韓民求(ハン・ミング)国防相にも責任追及の矛先を向けている。
 「北朝鮮地域には憲法によって日本の自衛隊が入ってこられない。我々の承認が必要だ」。韓国大統領府の金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長は23日の国会答弁で強調した。野党議員が、20日の日韓防衛相会談で「韓国の支配が有効な範囲は休戦ライン(軍事境界線)の南側だ」とした中谷氏の発言を取り上げて質問したのに答えた。
 北朝鮮は「韓国領」か。韓国政界でも与党セヌリ党幹部が党会合で「北朝鮮は厳然たる韓国の領土だ。政府は日本政府に確実に周知させなければならない」と力説した。
 批判の向かう先は日本だけではない。最大野党・新政治民主連合の報道官は韓国の国防相に矛先を向け「発言を隠蔽することにきゅうきゅうとしたのは実に屈辱的」と糾弾。国防相らの「全面的な問責」を強く求めた。
 国内世論の反発を受けて韓国国防省は22日、韓国メディアの記者団に「中谷発言は非公開にすると日本側と約束していた」と説明。「約束を破った日本は遺憾だ」とも話した。同省関係者は、中谷氏が騒ぎをおこしたことをおわびすると伝えてきたと明らかにした。
 朴槿恵(パク・クネ)大統領は22日に大統領府で開いた与野党代表らとの会談で「米日の協定でも米国の同意がなければならず、韓米間にも協定がある。結局は韓国の同意なしには(自衛隊が)入ってこられない」と語った。
 日本側には自衛隊の運用上の事情がある。日本政府は日本の防衛に必要なら、他国領の基地などを攻撃する可能性も排除していない。たとえば北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を攻撃する場合だ。北朝鮮を韓国領とみなし、韓国の同意なしだと北朝鮮領で活動できなくなれば「任務に支障をきたしかねない」(防衛省幹部)との懸念がある。


おバカな国と話をすると疲れますね。
中谷防衛相は、もし北朝鮮が日本にミサイル攻撃を仕掛けようとした場合、日本の憲法でも敵ミサイル基地を攻撃できることを念頭に話をしているのですが、「北朝鮮と言えども韓国領だから、韓国の同意が必要」などという建前論を振り回す輩がいるのです。
韓国が金王朝を認めないのは結構ですよ、しかし、実体として38度線から北の地域は何なのですか、ということです。
韓国領だと主張するなら、国際社会が禁じた弾道ミサイルや核兵器を即時撤去しなければなりません、それが「韓国領」の意味でしょ。
わたしたちは、「領土」と戦うのではない、その地域を実効支配している勢力と戦うのであって、例えばシリア領内のISを攻撃するのに、いちいちオバマ大統領はアサド大統領の同意を得ているのですか、というのと同じです。
もちろん、いざ有事となれば韓国にも通告するでしょうし、韓国も同意するでしょう、しかし「北朝鮮地域には憲法によって日本の自衛隊が入ってこられない。我々の承認が必要だ」とかの天動説的な形式論に拘泥しているようでは、この国とは一緒にやれないなと思います。
「中谷発言は非公開にすると日本側と約束していた」、「約束を破った日本は遺憾だ」、「中谷氏が騒ぎをおこしたことをおわびする」、おそらくこのあたりも例によって自己保身のための作文でしょう。
俺たちは悪くない、悪いのは全部あいつらだという、いつもの責任転嫁です。
日本も型どおり遺憾の意を示すのかもしれませんが、まあ疲れます。
日中韓の首脳会談開催が取り沙汰されてますけど、中国、韓国と政治的に疎遠だったここ6年余りにあっても、日本は何も困っていません。
小泉政権時代も首相の靖国神社参拝などを契機に「政冷経熱」なんて呼ばれてましたが、「政」ばかりか「経」も「熱」と言う程でなくなりました。
90年代から隣国とはいろいろな出来事があって、日本人の意識はだいぶ変わったのか、かつてのように日本のメディアも中韓ととにかく仲良くしろと言い難いのでしょう、「中谷発言」も国内でほとんど取り上げられてません。
このぐらいの距離感で、ちょうどいいのですよ。
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2015年10月23日

物価2%上昇、2割超す 食品など値上げ品目増 生活実感は脱デフレ?

23日朝刊5面【経済】
 モノやサービスの一部に価格上昇の波が広がっている。消費者物価指数の伸び率を支出額に応じた品目割合でみると、約4分の1が前年同月より2%以上、上昇している。品目の数でも上昇が下落を上回る。原油安が物価全体を下押しする一方、パンやセーターなど生活実感に近い物価が上がる形だ。景気の足踏み状況が長引く恐れが出る中、日銀の金融政策の運営も難しくなっている。
 8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比で0.1%低下と、2013年4月以来2年4カ月ぶりにマイナスとなった。食品などに値上がりが広がる一方、原油安の影響で電気代やガス代などエネルギー関連価格が下がっているためだ。
 内閣府がモノやサービスの品目ごとに、消費割合を加味して伸び率の分布を調べたところ、2%程度以上伸びた品目が23.6%となった。消費者がお金を使うモノの4分の1は値上がりしている実態を示す。日銀が量的・質的金融緩和を始めた13年4月は1割程度にとどまっていた。
 品目数でも値上がりの裾野が広がっている。内閣府が値上がり品目の割合から値下がり品目の割合を差し引いて指数化したところ、8月は34.4ポイントとなり、上昇品目数が大幅に上回った。13年4月時点はマイナス23.5ポイントと、下落品目数の方が多かった。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「株式市場でも値上げが好感される場面があり、企業が値上げしやすくなっている」と指摘する。
 ただ、サービスを中心に値動きが鈍い品目もなお多い。8月は理美容サービスが0.1%上昇、交通費が0.4%上昇と、7割が横ばい圏となった。堅調だったのは宿泊料(4.5%上昇)や外食(1.8%上昇)など一部だった。
 SMBCフレンド証券の岩下真理氏は「訪日外国人の増加や食品の値上がりといった特殊要因がなければサービス価格が上がっておらず、安定した物価上昇の軌道に乗っていない」と話す。
 30日公表の9月の消費者物価指数の市場予想は0.2%低下と、2カ月連続のマイナスになると見込まれている。今後は原油安の影響が一巡する一方、円安による価格押し上げ効果も弱まってくる。安倍晋三首相は「脱デフレは目前」と説明するが、物価の全体を見て金融政策を運営する日銀にとって、デフレ脱却への道のりはなお遠い。


バブル崩壊後、日本では「流動性のわな」が長く続き、人々はモノよりおカネの保有を選好してきました。
インフレ期待時であれば、おカネの価値が日々下がるので、早くモノに替えておこうとし、需要が供給を追い越していきます。
逆にモノの値段が日々下がるのであれば、おカネからモノに替えるのはもっと先の方がいいと考え、需要が急速に落ちていきます。
銀行の利子がいくらゼロ%であっても、モノの値段が下がっていれば、おカネを持っていたほうが実質的な利子が付いているのと同じで、こうなると金利の操作で経済をコントロールしようという伝統的金融政策が使えない事態へと陥ります。
「アベノミクス」の一つとされる、日銀による「異次元緩和」という非伝統的金融政策とは、要するにおカネの価値を政策的に落とし、インフレを喚起させていくというものです。
それによって、国内のモノの値段は上がり、為替もドルに比べて円安となります。
モノの値段も無闇矢鱈と上がればいい、と言う話ではなく、年率2%程度を目標としよう、所謂「インフレ・ターゲット」を政府と日銀とで設定したわけです。
その中で、2%上昇がやや増えてきたというのが今日の記事です。
ただミクロ的にみると、確かにガソリンは安いが、パンやバターは値段は前と同じでも量が減っているので値上げ感があるとか、
ホテルでは安い料金設定が消えたどころか、人気の店は予約が取れないので、高い所でもいいという感じで、まだら模様でしょう。
デフレが長かった分だけ、人々のマインドがインフレに対して強い抵抗があって期待に繋がってない、というのもあります。

おそらく経済政策で、いまが一番難しい時期なんだと思います。
これだけ政策を打っても、物価が思った以上に上がってきてない、「異次元緩和」の副作用も言われ始めている、金融当局にとっては辛い話です。
しかし、ここが堪えどころなんですね。
政策の方向は正しい、打つべき手も全部打ってある、であれば政策の手を緩めてはいけないのです。
給与も増えつつあるし、重要な政策目標である失業率が3%台と低位なのですから、おカネは回り始めています。
アメリカのFRBもそろそろ金融緩和解除かと言われてきましたが、まだ改善できてない数字があるので、暫く緩和を続行することになりました。
批判はあるでしょう、しかし正しい政策は継続してこそ効果があるのです。
かつて「平成の鬼平」などとマスコミから持て囃され、全く間違った政策を打った日銀総裁がいましたが、金融政策は大衆迎合では困るのです。
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2015年10月22日

シリア大統領が電撃訪ロ プーチン氏、影響力誇示 内戦終結へ主導権狙う

22日朝刊7面【国際2】モスクワ=田中孝幸
 シリアのアサド大統領は20日、秘密裏にモスクワを訪れ、ロシアのプーチン大統領と会談した。ロシアの21日の発表によると、両首脳は9月末から続くロシアによる過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆の継続について協議し、軍事面での連携を確認した。シリア内戦の収拾策についても話し合ったとみられる。ロシアがシリアの安定化に向けた協議を主導し、中長期にわたってシリアでの影響力を誇示する狙いが透ける。
 アサド氏の訪ロはロシア側の招待に応じたもので、クレムリン(大統領府)でプーチン氏と会談後、すぐにシリアに帰国した。タス通信によるとアサド氏の外遊は2011年に内戦が勃発して以来、初めて。
 プーチン氏は会談でロシア空軍による支援を受けたシリア政府軍が「国際テロとの戦いで相当な成果をあげている」と評価。「シリアでは旧ソ連出身者4千人がシリア政府軍と戦っている。彼らがロシアに戻るのは我々は許すことはできない」と述べ、ロシア国内のテロ対策上も空爆が必要だったと強調した。
 シリアの安定協議については「最終的には全政治勢力や民族・宗教グループが参加する政治プロセスを踏まえ、長期的正常化は達成できる」と指摘。「我々は戦闘だけでなく政治プロセスにも貢献する用意がある」と前向きな姿勢を示した。
 アサド氏はロシア側の軍事支援に謝意を表明。「戦闘の後に政治的措置がとられるのは当然だ」とも述べ、ロシア側が関与する停戦協議に応じる構えを見せた。
 プーチン氏が内戦中で危険な立場にあるアサド氏をあえてモスクワに招いた背景には、同氏に一部の反政府勢力と対話をさせるなど事態の収拾を急がせ、軍事介入の長期化を避ける思惑もある。
 ロシア大統領府によるとプーチン氏は21日、アサド政権と敵対するトルコのエルドアン大統領やサウジアラビアのサルマン国王とそれぞれ電話し、アサド氏との会談結果を伝えた。
 アサド氏は長年、中東で最大の親ロ政権を率いてきた。「ロシアが身の安全や影響力保持を図ってくれるとの信頼感があり、異例の外遊に踏み切った」(欧州外交筋)。訪ロで後ろ盾であるロシアの存在を内外に示す狙いとみられる。
 中東メディアによると一時はアサド氏が率いる政府軍は極めて劣勢にあったが、今月からロシアの集中的な軍事支援とイランからの地上兵力の参加を得て反政府勢力やISへの反転攻勢を開始。北部アレッポの周辺地域などを奪回しつつある。
 ただ、空爆支援だけではなお国土の半分以上を支配するISと反政府勢力に対して「政府軍が決定的に勝利するのは難しい」(ロシア国防省筋)。事態を放置して1980年代に失敗した旧ソ連のアフガニスタン軍事介入のようにロシア軍兵士の犠牲者が膨らめば、政権の支持率低下につながる懸念もある。ロシアの狙いはシリアでの親ロ政権の継続にある。当面はアサド大統領を支えつつ、近い将来同氏の退陣の見返りにアサド派やロシアの権益を認める体制に移行させる案が関係国間でとりざたされる。ロイター通信は、トルコの政府高官がアサド氏が半年間政権にとどまることを容認する計画を欧米各国と検討していると報じた。


プーチン大統領がシリア・ダマスカスを電撃訪問するものだと思っていましたが、アサド大統領をクレムリンに呼んだということで、そこにはいろいろな背景があったのだろうと思います。
いずれにせよ、このタイミングでロシアとシリアの首脳が会談することは、内容そのものより両大統領のツーショットを世界へ配信することに意味があります。
この写真をみれば、ロシアがシリア内戦だけでなく中東全域に大きな影響力を持ったことが今回明らかであり、逆にアメリカの力が大きく後退していることにもなります。
オバマ大統領には戦略がないと言われてますけど、いつも出たとこ勝負で何をやっても中途半端だし何も解決していない、最近もアフガニスタンからの2016年撤兵を見直すことになり、本当に世界の安全保障は大丈夫なのだろうかと心配になります。
一方、プーチン大統領と言えば自分からは決して事をおこさない、ウクライナにしろクリミアにしろシリアにしろ深く静かに潜行し、事態が誰にもどうしようもなくなった時点で初めて姿を表し、まず武力でもってエンゲージメントし、親ロ勢力の状況が有利になった所で和平の仲介をするというパターンです。
これはスマートだしカッコイイ、オバマ氏が引き立て役というかピエロにすら見えるぐらいです。

ロシアがウクライナ、クリミアを通って、シリア、イラク、イランへとインフルエンスを南下させている、これを「新南下政策」と仮に呼びましょう。
かつての「南下政策」は不凍港の獲得というのが目的でした、しかし弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦でロシアの核戦略は完結できているのですから、今更不凍港を遠くに求める必要はありません。
ロシアの狙いは、「世界の警察官」を降りたアメリカに代わり、ロシアによる新しい国際秩序を構築しよう、もっと言えばヘゲモニーの確立を意図しているのだと思います。
ロシア南部からペルシャ湾を結ぶ線は、彼らの地政学でピボット(軸)であり、戦略上非常に重要な地域なのです。
アメリカはTPPはじめ、身辺のブロック化に一生懸命で、また外交的失策も続いているので、これはチャンスだとロシアは考えているのです。
ここで問題となるのは、中国の存在だと思います。
中国もアメリカの後退に乗じて、自分たちの秩序を確立すべく「真珠の首飾り戦略」と称し、南シナ海からマラッカ海峡、インド洋、ペルシャ湾までの国益を確保しようと動いてます。
すると、交点である中東でロシアと中国は利害が衝突しますし、それは旧「南下政策」を阻止しようとするイギリスとの対立を想起させます。
今回のシリアへの介入も、こうした視点でもって見てみる必要があります。
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2015年10月21日

政府機関の移転に知恵絞れ

21日朝刊2面【総合1】社説2
 東京に集中する中央省庁や独立行政法人などの政府機関をどれだけ地方に移転できるか。地方創生を掲げる安倍政権の本気度を測る試金石になるだろう。
 政府は東京、神奈川、千葉、埼玉を除く43道府県に対して誘致したい政府機関を提示するように求め、8月末までに鹿児島県を除いた42道府県が69機関の誘致を提案した。
 現在、道府県や関係機関に意見を聞いており、年内に対応策をまとめて来年3月末までに移転機関を決定する方針だ。
 自治体側の提案をみると、文化庁や消費者庁、中小企業庁などの政府機関のほか、理化学研究所のような研究機関や消防大学校のような研修機関の誘致を求めている。69機関のなかには首都圏に立地する必然性が低い組織が少なからずある。
 政府機関の地方移転はかつて竹下内閣時代にも実施された。約70機関が移転したが、横浜市やさいたま市など東京近郊ばかりで、首都圏以外に移ったのは3機関だけだった。
 政府は現在、東京に集中する企業の本社機能の地方移転を税財政面から後押ししている。自ら範を示す意味でも、一定の成果を上げなければならないだろう。政府機関の移転が進めば地方経済への効果も大きい。
 各省庁の対応をみると気になる点がある。全面移転を避けるために、地方への出先機関の設置を逆提案する動きがある。見かけ上の移転件数を水増しするために行政の肥大化を招く結果になれば、本末転倒である。
 東京から移転できない理由としては国会対応や他の省庁との連携を挙げる場合が多い。一見もっともなようだが、むしろ、テレビ会議の活用など政府内部での仕事の進め方そのものを見直す機会にすべきだろう。
 移転できない理由をあれこれ探すのではなく、移転に伴うマイナス面を減らして効果を膨らます知恵が必要だ。


先日も、東京からつくば市に移転した某国立機関の研究者と話をした際も、「結局、東京とつくばの往復で仕事にならない」とボヤいていました。
東京に出掛けるのは、他省庁との折衝であったり、学会であったり、講演であったりと週の半分以上を占めるデスク以外の仕事のためであり、いくらつくばエクスプレスで45分ほどで都心に出られるとは言え、心理面からは「やはり不便だな」というものだそうです。
テレビ会議を経験した方ならよくお分かりのように、画面の向こう側とのやり取りで「報告」は親和性があるが、「議論」には不向きです。
メールにしても、ニュアンスが伝えられない、相手の反応が見えにくいというので、やはりこれも「議論」には向いていません。
「報告」「連絡」「相談」という事務レベルはITで十分置き換えることができますが、物事を進める上で最も必要な「議論」は、残念ながらフェイス・トゥ・フェイスでしか実現できないのです。

政府機関の地方移転は、一体誰が得をするのかという所です。
例えば文化庁が札幌に移転しました、その職員や家族も引越してきました、それだけの効果なのでしょうか?
むしろ、マイナス面の方が多いような気がします。
札幌に文化庁が存在しなければならない理由は何処にあるのか、これがよく分からないのです。
森林の試験場や水産の試験場などが東京に置かれる理由がないように、その機関を移転するのが単に「地方活性化のため」というのでは無駄だと思うのです。
この仕事のためには、ここに機関を設置するしかない、それでは自治体で受け容れましょうというのが本筋であって、「何だか知らんけど、ウチに国の偉い役所が来るってさ」では困ります。
企業の地方移転でも、単なるコスト削減が理由では失敗しており、その地域に根ざすことに拘る何らかの大きな理由があって、それを強みにしているから競争で勝てるのです。
移転のための移転であってはならず、必要あっての移転であって欲しい所です。
このままですと、地方には本庁の看板だけ掛けて、実態は東京にあるだなんてことになりかねませんね。
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